投資前に税金の基礎知識を理解!運用に関する税金を解説
投資に関する基礎知識
NISAや確定拠出年金など、個人向けの投資に関する制度が充実してきました。そのため、投資を始めてみようと考えている人も多いでしょう。資産運用にはさまざまな知識が必要となりますが、その中でも税金の知識は欠かせません。税金のことがわからないと上手く節税できず、投資利回りにも影響が出るでしょう。
そこで、投資を始める前に知っておくべき税金の基礎知識である各種所得や分配金の課税、そして特定口座などについてご紹介します。
投資の税金の理解は所得の種類を理解すること
譲渡所得とは?
個人が所得を得た場合、所得税や住民税などが課税されます。所得税などを計算する場合は、その性質に応じて10個に区分されている所得ごとに利益を把握します。投資を行っていると10個の所得のうち主に4つの所得が生じることになります。その1つが譲渡所得です。譲渡所得とは株式や債券、投資信託を売却したときに生じる売却益のことです。
例えば株式を売却した場合は、売却金額から購入手数料を含めたその株式の購入金額と売却手数料を引いて譲渡所得を求めます。投資におけるほとんどの譲渡所得は、不動産の売却や書画・骨董などの売却などと区別されている上場株式等の譲渡所得に含まれます。
課税方式は、他の所得と合算せずその所得だけで税額を確定させる分離課税が適用され、税率は所得税・住民税・復興特別所得税合計で20.315%です。
配当所得とは?
投資で生じる所得としては配当所得もあげられます。株式の配当金をもらった場合や投資信託の普通分配金をもらった場合は配当所得が生じます。株式の配当金は、配当金が支払われる段階で所得税などの税金として20.315%が源泉徴収されます。しかしこの税金は仮の税金で、原則は総所得金額を構成する配当所得として申告する必要があります。
総合課税の配当所得は他の給与所得や事業所得などと合算して課税総所得金額を求めます。税額は、その課税総所得金額の大きさに応じて決まっている税率を適用し算出します。この課税方式は総合課税と呼ばれ、適用される税率は所得が多ければ多いほど税率が高くなる超過累進税率が採用されている点が特徴です。
また、申告分離課税での申告や一定の要件を満たす場合は申告不要も選択できることになっています。
利子所得とは?
預貯金の利子を受け取った場合、債券などの利息を受け取った場合、さらに投資信託の投資対象が公社債に限られている公社債投資信託からの分配金を受け取った場合は利子所得が生じます。
以前は、ほとんどすべての利子所得は20.315%の源泉分離課税で課税関係が完結し申告する必要はありませんでしたが、税制改正によって預貯金の利子以外は申告分離課税、つまり原則は確定申告が必要な所得に変わりました。税率は20.315%で源泉徴収分と同じです。
一定の要件を満たせば源泉徴収だけで申告不要にすることも可能です。申告すると有利になるケースとしては、株式の売却損などが生じていて損益通算を活用して節税する場合などがあげられます。
雑所得とは?
金融資産運用の中には雑所得が生じるものもあります。雑所得とは、個人が得た所得で10個の区分のうちの他の9つの所得に該当しないものです。公的年金を受け取った場合も雑所得となりますが、金融資産運用ではFX投資が雑所得となるものの代表例といえるでしょう。
FX投資の雑所得の金額の計算は、為替差益などから必要経費を引いて求めます。国内FXの雑所得は分離課税で税率は20.315%となりますが、海外FXの雑所得は総合課税で超過累進税率が適用されます。
配当控除は二重課税の排除のための規定
配当所得が生じている場合は、申告分離課税にすることで株式売却損と損益通算するといった節税方法もありますが、総合課税で配当所得を申告する場合は配当控除と呼ばれる税額控除の適用を受けて節税することも可能です。
配当控除とは、個人が受け取った配当金の10%もしくは5%を税額控除できるものです。配当金の原資となる企業の利益にかかる法人税と個人が受け取る配当にかかる所得税の二重課税を排除するために設けられました。
所得の合計額が1,000万円を超えると、その超えた額に相当する配当所得に対する控除率は5%になります。超えない分に相当する配当所得に対する控除率は10%とされています。
投資信託の収益分配金には課税と非課税がある
普通分配金は課税対象
投資信託は決算期ごとに投資家に対して収益分配金を支払います。利益の状況によって収益分配金は変動しますので、多い時もあれば少ない時、まったく出ないときもあります。これから投資を始めようと考えている人は、株式投資信託の収益分配金には普通分配金と元本払戻金の2種類あることをよく理解しておきましょう。
まず普通分配金についてです。普通分配金とは、投資家にとって含み益となっている部分が収益分配金として支払われるものをいいます。投資家にとっての利益になりますので、配当所得として課税されます。投資信託から受け取るお金は、普通は投資家にとって利益だと考えられます。そのため、その収益分配金は普通分配金と呼ばれ課税対象になるのです。
元本払戻金は非課税
一方、課税されない収益分配金もあります。それは元本払戻金です。元本払戻金は特別分配金ともいわれます。元本払戻金とは、文字通り投資家が投資信託委託会社に送金した元本である投資額が、利益を稼ぐことなく手元に戻ってきてしまったものです。
つまり、元本払戻金は、投資信託が生み出した利益を投資家がもらったのではなく、自分自身が投資信託に預けておいたお金が払い戻されて投資の元手が減少してしまったことを意味します。特別分配金はもともと投資家のお金ですので利益は得ていないことになります。そのため元本払戻金は非課税扱いになるのです。
以前は「特別に非課税である収益分配金」という意味で特別分配金と呼ばれることが多かったですが、「特別にもらえる分配金」だと勘違いする人が多かったため、証券業界として元本払戻金と呼ぶように変わりました。
運用するなら特定口座の活用がおすすめ!
運用をする場合は証券会社に口座を開設する必要があります。非課税口座を除けば、口座には一般口座と特定口座がありますが、特定口座を活用することをおすすめします。特定口座とは、証券会社などが投資家の所得計算を本人の代わりに行ってくれるサービスがついている口座です。
さらに特定口座には2種類あり、証券会社などが源泉徴収を行ってくれるものと源泉徴収がないものがあります。源泉徴収ありの特定口座を開設し、その口座内で取引を行えば、通常は源泉徴収が行われない株式の売却益に対する税金なども証券会社などによる源泉徴収が行われますので、投資に関しては申告不要が選択できるようになります。
特に、投資初心者にとって確定申告は不安でしょうから、申告不要が選択できる特定口座を活用するメリットは大きいでしょう。
投資を始める前に税金の基礎知識は理解しておこう
投資を始めたい人は、早く証券会社などの口座を開いて実際の取引をスタートしたいと考えがちです。しかし、実際の取引を始める前に税金に関する基礎知識はしっかり理解しておくことをおすすめします。
理解しておくことによって、取引をしながら税金の影響を考え常に税引き後の利回りを意識できるようになりますし、節税するために何を準備しておくべきか思いつくようになるでしょう。確定申告時期になって慌てなくても良いように、あらかじめ税金の勉強をしてから投資を始めましょう。