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FXの個人口座で利益を得た場合、毎年2月中旬から3月中旬に「確定申告」を行って収入を申告し、税金を支払います。この記事では、サラリーマンで確定申告の方法自体が分からないという方や、国内FXでの確定申告しか経験がない方向けに、海外FXでの確定申告の方法を紹介します。
今回の記事では、海外FXの税金に関係する代表的な3つの疑問を考えていきます。
海外FXの確定申告を理解するための3つのポイント
海外FXの確定申告をする前に
確定申告って何?
確定申告とは、簡単に言うと、「1年間の収支をきちんと計算して、納税します!」と税務署に自己申告する手続きです。サラリーマンなど企業に雇用されている方は、会社側が納税業務を代行しているため身近に感じる機会が少ないかもしれません。ただ、会社側が扱うのは給与所得のみですので、海外FXで得た「一定額以上」の利益分の所得税は自分で確定申告をして納税する必要があります。
確定申告が必要かどうかを調べる
確定申告をする必要がある人は?
給与所得者 | 海外FXの年間利益が20万円を超えると確定申告が必要 |
非給与所得者(※) | 海外FXの年間利益が38万円を超えると確定申告が必要 |
給与所得者 |
海外FXの年間利益が20万円を超えると確定申告が必要 |
非給与所得者(※) |
海外FXの年間利益が38万円を超えると確定申告が必要 |
会社に雇用されていない専業主婦・専業トレーダーなど。
私たちの働き方は大きく2種類に分けられます。企業に雇用され対価として給料を得ている「給与所得者」、フリーランス・専業主婦などの「非給与所得者」です。給与所得者には、企業に勤めている正規職員だけでなく契約社員やパート・アルバイトなども該当します。
確定申告をする必要があるかどうかを含め、税金の計算は「給与所得者か非給与所得者」かによって大きく異なります。
海外FXの確定申告をする判断基準
給与所得者 (企業に雇用されている人) |
サラリーマン・パート・アルバイト等 |
年間利益20万円を超える場合(※) | |
非給与所得者 (企業に雇用されていない人) |
専業主婦・専業トレーダー等 |
年間利益38万円を超える場合(※) |
給与所得者 (企業に雇用されている人) |
サラリーマン・パート・アルバイト等 |
年間利益20万円を超える場合(※) |
非給与所得者 (企業に雇用されていない人) |
専業主婦・専業トレーダー等 |
年間利益38万円を超える場合(※) |
海外FXの利益は「雑所得」という所得区分になります。他の副業等も含む雑所得の合計が20万円または38万円を超えた場合、確定申告が必要です。
以下の項目に当てはまる人は、海外FXの利益に関わらず確定申告が必要です。詳細は国税庁のホームページ、税理士や税務署にお尋ねください。
- 個人事業主の人
- 給与の収入金額が2,000万円を超える人
- 給与を2か所以上から受けている人
- 同族会社の役員やその親族などで、その同族会社からの給与のほかに、貸付金の利子等などによる収入がある人
課税対象となるのは、どのタイミング?
確定申告で課税対象となるのは「ポジションを決済した」タイミングです。
課税対象 | ポジション決済して損益が確定した |
課税対象外 | ポジション保有中で評価損益がプラス |
課税対象 |
ポジション決済して損益が確定した |
課税対象外 |
ポジション保有中で評価損益がプラス |
ポジション決済をして損益が確定した段階で課税対象となります。ポジション保有中の評価損益は、損益が確定していないので課税対象にはなりません。
海外FXと国内FXの税金の違い
海外FXと国内FXの税制の違い
海外FXと国内FXでは、利益にかかる税金が異なります。下記の表の通り、海外FXは、「雑所得、総合課税、累進課税方式」で税金を計算します。一方、国内FXは、「雑所得、申告分離課税、一律税率」で税金を計算します。また、海外FXと国内FXでは、損失繰越ができるかどうかも異なります。
海外FXと国内FXの税金の違い
項目 | 海外FX | 国内FX |
---|---|---|
所得区分 | 雑所得 | |
税区分 | 総合課税 | 申告分離課税 |
税率 | 累進課税 (所得が上がるほど、税率も上がる) |
一律20% (2037年までは復興特別所得税があるため、20.315%) |
損益の相殺 (損益通算) |
「雑所得、総合課税方式」に分類される項目
(例:複数の海外FX業者間の損益、仮想通貨の損益、アフィリエイト収入)
|
「先物取引に係る雑所得等」に分類される項目
(例:複数の国内FX業者間の損益、先物・オプションによる損益)
|
損失繰越 | 不可 | 3年分の損失繰越が可能 |
確定申告をする 所得水準 |
給与所得者(サラリーマン):20万円超 非給与所得者:38万円超 |
所得区分 | |
海外FX | 雑所得 |
国内FX | |
税区分 | |
海外FX | 総合課税 |
国内FX | 申告分離課税 |
税率 | |
海外FX | 累進課税 (所得が上がるほど、税率も上がる) |
国内FX | 一律20% (2037年までは復興特別所得税があるため、20.315%) |
損益の相殺(損益通算) | |
海外FX |
「雑所得、総合課税方式」に分類される項目
(例:複数の海外FX業者間の損益、仮想通貨の損益、アフィリエイト収入)
|
国内FX |
「先物取引に係る雑所得等」に分類される項目
(例:複数の国内FX業者間の損益、先物・オプションによる損益)
|
損失繰越 | |
海外FX | 不可 |
国内FX | 3年分の損失繰越が可能 |
確定申告をする所得水準 | |
海外FX | 給与所得者(サラリーマン):20万円超 非給与所得者:38万円超 |
国内FX |
海外FXの税金で覚えておきたい!
- 海外FXは、利益が出るほど税金も高くなる
- 国内FXとは損益の相殺(損益通算)ができない
- 翌年以降に損失繰越ができない
では、それぞれ順番に説明していきます。
海外FXは総合課税【税区分】
海外FXには総合課税が適用されます。「海外FXの利益(雑所得)や会社の給料(給与所得)、講演料(一時所得)、不動産収入(不動産所得)など、総合課税が適用される全ての所得の合計金額から納税額が計算される仕組み」です。
総合課税制度に分類される主な所得区分
- 雑所得(海外FX、仮想通貨、アフィリエイトなど)
- 不動産所得
- 給与所得(勤務先から受け取る給料)
- 事業所得
例1)サラリーマンの場合
給与所得 | 海外FXの利益 |
---|---|
300万円 | 200万円 |
→合計500万円の所得に対して納税額が計算される。(※)
給与の額面額から給与所得控除の金額を差し引いたもの。例えば、給与の額面額が500万円のサラリーマンであれば、給与所得は346万円となる。
例2)専業トレーダーの場合
ブログ収入 | 不動産所得 | 海外FXの利益 |
---|---|---|
50万円 | 200万円 | 500万円 |
→合計750万円の所得に対して納税額が計算される。(※)
一方、国内FXは、同じ雑所得の区分ではありますが、申告分離課税が適用されます。申告分離課税は、「他の所得の金額と合算せずに別々に分けて税額を計算する方法」です。
例3)国内FXと海外FXの両方で利益がある場合
国内FXの利益 | 海外FXの利益 |
---|---|
50万円 | 100万円 |
→国内FXは申告分離課税なので、50万円に対して20%(10万円相当)の税金がかかる。
→海外FXは総合課税なので、他の所得との合計金額によって納税額が変動する。
実際には、総所得から必要経費や控除などを差し引いた額が実際の所得であり、確定申告の際の課税対象となります。
企業に勤めているサラリーマンの場合は、会社による源泉徴収によって給与所得の所得税を納めている人が多いと思います。勤め先で源泉徴収されているならば、確定申告の際に海外FXの税金分だけ別途支払えば問題ありません。
海外FXは累進課税【税率】
累進課税とは、「所得に応じて税率が上がる仕組み」のことです。
海外FXに適用される所得税の累進課税税率は下記の表のとおりです。これに加えて、住民税も一律で10%かかります。
海外FXに適用される税率
所得金額 | 所得税率 | 控除額 | 住民税 |
---|---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 | 10% |
195万超~330万以下 | 10% | 9万7,500円 | |
330万超~695万以下 | 20% | 42万7,500円 | |
695万超~900万以下 | 23% | 63万6,000円 | |
900万超~1,800万以下 | 33% | 153万6,000円 | |
1,800万超~4,000万以下 | 40% | 279万6,000円 | |
4,000万超 | 45% | 479万6,000円 |
195万円以下 | |
所得税率 | 5% |
控除額 | 0円 |
住民税 | 10% |
195万超~330万以下 | |
所得税率 | 10% |
控除額 | 9万7,500円 |
住民税 | 10% |
330万超~695万以下 | |
所得税率 | 20% |
控除額 | 42万7,500円 |
住民税 | 10% |
695万超~900万以下 | |
所得税率 | 23% |
控除額 | 63万6,000円 |
住民税 | 10% |
900万超~1,800万以下 | |
所得税率 | 33% |
控除額 | 153万6,000円 |
住民税 | 10% |
1,800万超~4,000万以下 | |
所得税率 | 40% |
控除額 | 279万6,000円 |
住民税 | 10% |
4,000万超 | |
所得税率 | 45% |
控除額 | 479万6,000円 |
住民税 | 10% |
一方、国内FXの利益は一律20%の税率(住民税込み)となっていて、他でどれだけ収入を得ていても変わりません。海外FXよりも国内FXの方が税金はお得と言われている理由の1つですが、海外FXと国内FXでどちらが税金が安いかは、個人の所得などの条件次第です。
上記の表を見ても分かる通り、所得金額が195万超~330万円以下であれば、所得税が10%、住民税が10%ですので、国内FXの税率20%と変わりません。
では、年収330万円以上のサラリーマンは国内FXよりも税金がかかるかというと、実際にはもう少し収入が上がっても、国内FXと同程度の税率に抑えられます。税金の計算上、「給与所得」は、給与の額面金額から最低でも65万円の「給与所得控除」を差し引いた金額になるため、年収の額面金額よりも低くなるからです。(例:給与の額面額が500万円のサラリーマンであれば給与所得は346万円)
海外FXと国内FXでどちらが税金が安いかは、個人の所得金額によって変わる。
海外FXの確定申告で必要な3つのポイント
ここからは海外FXの確定申告で覚えておきたい3つのポイントをご紹介していきます。
国内FXとは損益を相殺(損益通算)できない
国内FXから海外FXへ年度途中に移行しました。確定申告で損益の相殺(損益通算)はできますか?
損益の相殺はできません。別々に計算する必要があります。
ポイントの1つ目は「国内FXと海外FXの損益通算はできない」という点です。海外FXは総合課税ですが、国内FXは申告分離課税なので税区分が異なっています。そのため、片方で利益が出て、片方で損失が出ていたとしても、利益が出た方の利益分全額が課税対象となってしまいます。
例)国内FXで損失、海外FXで利益が発生した場合
国内FXの損失 | 海外FXの利益 |
---|---|
-20万円 | 100万円 |
損益通算ができないため、海外FXの利益100万円がそのまま課税対象額となります。
海外FXで損益通算できるのは海外FXと同じ税区分の「雑所得、総合課税方式」に分類される項目で、もちろん、海外FX業者同士の損益も相殺できます。
例)海外FXで損益通算できる場合
XMTrading(エックスエム) | +300万円 |
---|---|
Titan FX(タイタン FX) | +300万円 |
仮想通貨取引 | -150万円 |
ネット転売 | +10万円 |
アフィリエイト収入 | +40万円 |
上記の例は全て「雑所得 総合課税方式」に分類されます。
この場合、確定申告で損益通算して雑所得の最終利益を+400万円として申告できます。
海外FXは損失繰越できない
海外FXで1年間の収益がマイナスでした。翌年に損失を繰り越したいのですが・・・
残念ながら海外FXは損失繰越が利用できません。
2つ目のポイントは、「損失繰越ができない」という点です。国内FXでは、1年間の損益がマイナスであったとしても、確定申告を行うことで最長3年先まで損失繰越が可能です。一方、海外FXは前年にどれだけ損失があったとしても、1年サイクルで損益が確定します。
例)1年目で-50万円、2年目で300万円の利益が出た場合
国内FX
1年目も確定申告をする必要あり。
2年目は1年目の損失繰越分と相殺して、250万円が課税対象となる。
海外FX
2年目の利益300万円が課税対象額となる。
ボーナス分は所得に含めない
海外FX業者のボーナスは所得に含めますか?
出金できないボーナスであれば、課税対象外です。確定申告で申告する必要もありません。
海外FX業者の魅力の1つが「豪華なボーナス」です。主に証拠金のみに使えるボーナスと現金残高としてキャッシュバックされるボーナスの2種類があります。所得に含めるかどうかの判断基準は「出金できるかできないか」という点です。例えば、XM Tradingの入金ボーナスはトレードの証拠金のみに利用可能で出金できません。ですが、一部の業者では条件を満たすとキャッシュバックボーナスが付与され実際に出金できるものもあります。
ボーナスが出金できるかどうかは、MetaTrader4(MT4)のターミナル画面で判断可能です。
※MetaTrader5(MT5)の場合はツールボックス画面です。
「残高」と表示されているものが出金可能な資金で、「クレジット」と表示されているものが出金できないボーナスです。(残高とクレジットを合計したものがトレードに利用できる有効証拠金となります。)
したがって、ここに付与されているボーナスは「課税対象外」となります。一方、キャッシュバックボーナスの場合、残高に付与されますので課税対象額となります。
白色申告と青色申告
白色申告と青色申告の主な違いは何ですか?
青色申告は様々な節税制度が利用できますが、利用するには複数の条件が求められます。
確定申告には、簡易的な白色申告と青色申告の2種類があります。2つの確定申告の違いについてみていきましょう。
サラリーマンは主に白色申告
FXを副業としているサラリーマンの人は、主に「白色申告」を利用することになります。
メリット | 注意点 |
---|---|
・事前の申請は必要ない ・簡易的な記帳でOK |
・特別控除など各種節税対策ができない。 |
メリット |
・事前の申請は必要ない ・簡易的な記帳でOK |
注意点 |
・特別控除など各種節税対策ができない。 |
事前の申請などは必要ありませんので、確定申告の時期までに前年度の損益をまとめて、確定申告書類を作成し、税務署へ提出して税金を納付すれば完了します。副業収入を含め、青色申告を申請していない個人事業主の人も白色申告を利用することになります。
青色申告って何?
一般によく聞くのは「青色申告」です。青色申告は、申告をしようとする年の3月15日までに個人事業の開業届と青色申告承認申請書を届け出る必要があります。サラリーマンの人が個人事業の開業届を出すケースは少ないと思いますので、ほとんど該当しないでしょう。もうすでに開業届を提出し、事業所得を得ている個人事業主・フリーランスの人は、海外FXの利益を「雑所得」として申告をします。
税金はしっかり払おう
ここまで海外FXの税金について説明してきました。日本に居住しているのであれば、海外FXを使っていたとしても税金をしっかり払う必要があります。サラリーマンであれば、基本的に年間利益20万円以上で確定申告をしなければいけません。「海外だからばれない」と思っていても脱税をしてしまうと、重い罰金や最悪のケースで逮捕されてしまうかもしれません。
海外FXの税金は高いと感じるかもしれませんが、ハイレバレッジ・ゼロカット・豪華なボーナスなど利益を出しやすい環境が提供されており、トレーダーにとっての魅力が豊富にあります。税金をきちんと支払って、気持ちよく海外FXをしていきましょう。
編集部の
コメント
年末が近いのであれば、節税対策としてポジションの持ち越しをすることもできます。但し、年末年始は流動性が低くなり、突然の急激な価格変動「フラッシュクラッシュ」などが起きやすくなりますので慎重に検討しましょう。