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「海外FXの法人化にメリットはあるのか?」と疑問に思う人もいるでしょう。確かに、国内FXと違い、法人化によってレバレッジ等の取引条件が変わるということはありません。しかし、海外FXでも、経費の範囲が広がる等の節税対策や、損失繰越・損益通算が可能になるなど様々なメリットがあります。
この記事では、海外FXで法人口座を開設するメリットとデメリットについて詳しく調べていきましょう。
知りたい情報 TOP3(ここを読めば解る)
海外FXの個人口座と法人口座の違い
レバレッジ等の取引条件は同じ
海外FXでは、個人口座と法人口座でレバレッジ等の取引条件は基本的に同じです。国内FXで法人口座を設立するメリットは、金融庁の規制により最大レバレッジが25倍に制限されている個人口座よりも、法人口座ではハイレバレッジでトレードができるという点ですが、海外FXでは個人口座でもハイレバレッジでトレードが可能です。当社で紹介している海外FX業者は、レバレッジ200倍~888倍のトレードができます。
Traders Trust(トレーダーズ トラスト)など一部の業者では、口座残高の大きなトレーダーや取引量の多いトレーダーに対して、スプレッドを狭くするなどの優遇措置を実施していますが、法人口座を対象に一律に取引条件が変わるということはありません。
このため、法人口座を開設するメリットは、税金の制度に関わるメリットとなります。
海外FXの法人口座には法人税が適用される
海外FXの個人口座で得た利益には、個人に対する所得税が適用されますが、法人口座で得た利益には、法人に対する法人税が適用されます。個人口座の所得税は税率が5~45%の「累進課税」、つまり所得額が増えるほど税率も高くなる仕組みなので、税率が一定の国内FXよりも税金が高くなるケースがあります。一方、海外FXの法人口座に適用される法人税は、税率が15~23.2%であるため、利益が高くなればなるほど、個人の所得税よりも税率が低く抑えられます。
個人口座・法人口座の税制の違い
口座種別 | 適用される税制 | 税率 |
---|---|---|
国内FX個人口座 | 申告分離課税 | 一律20%(住民税込み) |
海外FX個人口座 | 総合課税 | 所得金額に応じて5~45%+住民税10% |
海外FX・国内FX法人口座 | 法人税 | 15~23.2%+法人事業税、法人住民税等 |
但し、法人を設立して税率を低く抑えても、その利益を役員報酬として個人が受け取るのであれば、結局個人にかかる所得税と同じ税率が適用されますので、法人税の低さは直接的な節税対策にはならない場合もあります。これについては次章で解説します。
損失繰越・損益通算等の税制度が違う
海外FXの個人口座と法人口座に適用される税制は、税率だけでなく、損失繰越ができるかどうかや損益通算できる範囲が異なります。また、納税申告の方法も、個人口座を使っているトレーダーは毎年2月~3月に行われる「確定申告」を作成して所得税を算出し納税しますが、法人口座を使っているトレーダーは法人の「決算書」を作成しなければいけません。
以下に個人口座と法人口座の違いを簡単にまとめてみました。
海外FXの個人口座と法人口座の違い
個人口座 | 法人口座 | 備考 | |
---|---|---|---|
設立費用 | なし | 10万円~30万円程度 | 海外FXの法人口座開設は無料だが、法人登記などにコストが発生する |
税理士顧問料 | 個人でも対応可能 | 決算内容が複雑で専門家のアドバイスが必要 | 税務処理が複雑なので、税理士に依頼する場合が多い |
所得の確定方法 | 確定申告 | 決算 | 決算書は確定申告と異なり、複雑 |
赤字の場合 |
|
|
|
損失繰越 | 不可 | 10年間 | |
未決済ポジションの扱い (スワップポイントも含む) |
所得に含めない | 決算書に記載する | |
経費の範囲 | 狭い | 広い | |
損益通算 (損益の相殺) |
できない | できる | 法人は事業所得として、他の収入と合算できる |
事務所やパソコン | 事業共用分のみ | 法人名義での購入であれば、全額計上可能 |
副業としてFX取引以外にもアフィリエイト、ライター業、講師業など投資関係以外の収入があるトレーダーは、全ての収支を「事業所得」として計上でき、経費の範囲も広くなりますので法人化のメリットは大きいと言えます。
但し、法人設立費用や決算作成のために税理士と顧問契約をする場合などは、個人口座では考えなかったランニングコストも発生します。次の章では、法人口座のメリット・デメリットを詳しく調べていきましょう。
法人口座のメリット
役員報酬の調整で節税対策になる
法人化した場合に節税効果を上げるには、役員報酬を調整する方法があります。法人税の税率は15~23.2%、個人の所得税の税率は5~45%であるため、最高税率は法人税の方が低いです。そのため、FXの利益が多いほど法人税が適用された方が税率は低くなります。但し、法人の利益を役員報酬として個人が受け取るのであれば、結局個人にかかる所得税と同じ税率が適用されますので、直接的な節税対策にはならない場合もあります。
下の図の通り、売上から経費を除いた会社の利益に対しては法人税率15~23.2%が適用されますが、会社の経費の中に含まれる役員報酬には、個人の所得税5~45%や住民税がかかります。
法人口座で節税効果を上げるためには、家族を法人の役員にするのも一つの手です。法人の場合、家族が事業に関わっていれば給与として支払いができ、例えば、奥様が経理を担当している場合も該当します。所得税は、個人単位で税率が適用され、収入が多ければ税率も高くなります。つまり、同じ金額の所得を自分一人で受け取るよりも、複数人で受け取るほうが、税率が低くなります。もちろん、妥当な範囲内で給与額を決定する必要がありますが、複数人で所得を受け取る「所得の分散」となり、法人の節税対策として重要です。
また、役員の人数を増やせない場合でも、自分が受け取る役員報酬を減らし、会社の内部留保を増やせば、法人税の低い税金の恩恵を受けることができます。毎月の役員報酬を受け取った後の余剰分を会社に内部留保し、その資金で更にFX取引をすることは、いわば複利で資産を増やしていくようなメリットとなります。但し、この場合に注意しなければならないのは、内部留保した利益をその後自分で受け取ろうとした場合は、再度税金を支払わなければならない点です。法人を設立した方が節税メリットがあるかどうかは、税理士などの専門家に相談して検討した方がいいでしょう。
法人の節税では、役員報酬の調整が重要。
経費の範囲が広がる
法人化による節税のもう一つのポイントは、経費です。FXの個人口座で経費が認められるのは、投資関係の書籍代、セミナー代などですが、法人口座の場合、投資関係の出費はもちろん役員報酬や生命保険、健康保険、住居費用の一部など様々な経費の計上が可能です。
法人口座の経費の計上(例)
経費種別 | 個人口座 | 法人口座 |
---|---|---|
書籍代 | 〇 | 〇 |
セミナー代 | 〇 | 〇 |
役員報酬 | × | 〇 |
生命保険などの 各種保険 |
× | 〇 |
パソコン代などの ランニングコスト |
FXで使う割合分 のみを計上 |
法人名義で購入すれば 原則全額計上できる |
退職金 | × | 〇 (退職所得控除等の控除制度の 対象となり、節税につながる) |
法人化すると、一般の企業と同じように各種保険(厚生年金など社会保険)などにも加入でき、各種控除を利用することが可能です。
また、退職金を積み立てる費用も経費となります。退職金として本人が受け取る際に税金はかかりますが、退職金として受け取った分は「退職所得控除」等の各種控除制度を利用でき、課税額が少なくなりますので、節税となります。(詳細は税理士にご確認ください。)
個人口座より損益通算の範囲が広い
海外FXで利益を得て、仮想通貨など別の部分で損失を出した場合、その損益を相殺(損益通算)できます。しかし、海外FXの個人口座では損益通算できる範囲が狭く、海外FXと同じ税区分の「雑所得、総合課税方式」に分類される項目のみとなります。海外FXの個人口座で損益通算できる収入には、複数の海外FX業者間の損益、仮想通貨の損益、アフィリエイト収入などがあります。
一方、法人では、収入の種類によって分類するということはありません。FX取引と、会社が行っているその他の事業の収益を合算した事業所得を算出し、最終的な所得に対して法人税が課せられます。例えば、FX取引以外の別の事業で赤字が出ていて、FX取引で大きな利益が出ていた場合、FXの利益と別の事業の赤字を相殺することで、課税される金額を低くできるということです。
10年間の損失繰越が可能
海外FXの個人口座では、損失繰越が認められていませんが、法人口座であれば、10年間損失繰越を行うことができます。損失繰越とは、1年目で赤字が発生して翌年以降に利益がでたときに、1年目と翌年以降分の損益を相殺できる仕組みです。つまり、現在の赤字で将来の黒字分を相殺できます。
法人口座では、「欠損金繰越控除」という制度を利用して損失繰越を行います。これは、FXの利益だけではなく、法人全体として赤字があった場合に利用できる制度です。
国内FX個人口座であれば、損失繰越は最長3年認められています。一方、海外FX個人口座では、損失繰越が認められていません。この点が海外FXのデメリットでしたが、法人口座を作れば、海外FXであっても損失繰越の制度を利用することができます。
含み損も計上できる
個人口座と違い、決算期日に保有しているポジションの含み損益を計上することができます。含み損を計上できると、課税額も必然的に少なくなります。スイングトレードなど、特に長い時間足で取引をする場合は、一時的に含み損になるケースも多いので、節税につながりますね。但し、法人口座では含み益も計上しなければならないため、税金の計算上どのようにポジションを処理するか、決算期日に検討することをおすすめします。
法人口座のデメリット
赤字でも税金が発生する
法人は、年に1回の決算期に税金を納税しなければいけません。この際に法人税、法人住民税など法人に関連する課税額をまとめて算出し、納税を行います。もし、決算で赤字であっても法人住民税は支払わなければいけません。個人口座の場合は、赤字であれば納める税金はゼロですが、法人口座の場合、法人住民税として、最低でも7万円のコストが発生します。
法人設立に時間とコストが掛かる
海外FXの法人口座を開設するには、そもそも法人を設立しなければいけません。法人を設立するには、かなりの準備時間とある程度のコストが掛かります。法人登記をするだけでも、法定費用や司法書士の手数料などで通常数十万円の初期費用がかかり、更に税理士などの顧問料なども発生します。
また、法人を設立するだけでなく、出金の際に必要となる法人名義の銀行口座を用意する必要があります。銀行では、事業内容を確認されますが、事業内容が「FX取引のみ」だと銀行口座の開設が認められないケースがあります。FX取引以外の事業、例えばアフィリエイトやライター業等を行ったり、銀行口座開設への制限が緩いネット銀行で口座開設を行ったりすると、比較的口座が開設しやすいと言われています。
法人にはいくつかの種類があり、種類によって設立コストが異なります。FXの法人としてよく設立されるのは、株式会社と合同会社です。
株式会社とは、役員以外の出資者(株主)から資金を調達して運営をすることができる法人形態です。設立コストは合同会社よりも高くなりますが、社会的信用は高くなります。
一方、合同会社は株式会社よりも低コストで簡単に設立できます。「会社の所有者=会社の経営者」という形式なので、比較的小規模の事業を想定しています。法人に関する税金は株式会社と同じなので、節税や損失繰越などのメリットだけが目的なら合同会社でも十分です。
法人口座の開設方法
法人口座開設の流れ
海外FX業者で法人口座を開設するには、個人口座とは別の手続きが必要です。法人口座専用の口座開設フォームから口座開設申請を行い、別途指定された書類を提出します。提出すべき書類は、個人口座の場合、「現住所証明書」「身分証明書」の2点の海外FX業者が多いですが、法人口座では必要な書類の数が増えます。
例として、Titan FX(タイタンFX)で法人口座を開設するときに必要な書類を紹介します。
Titan FXの法人口座開設で必要な書類(日本法人の場合)
- 会社の登記簿謄本(発行から3か月以内)
- 会社役員全員のIDセルフィー1点と、住所証明書(発行から3か月以内)1点
コンプライアンスチームの判断により、別途追加書類が必要となる場合があります。
各海外FX業者の法人口座開設対応
法人口座を開設できる海外FX業者がほとんどですが、例外としてXM Trading(エックス エム)は法人口座の開設を認めていません。
各FX業者の法人口座開設の対応についてまとめてみました。
各海外FX業者の法人口座開設方法
海外FX業者 | 開設可否 | 法人口座開設方法 | 必要書類 |
---|---|---|---|
× | - | - | |
〇 | Titan FX 口座開設フォームより、 「法人取引口座」を選択して口座開設 |
必要書類詳細 | |
〇 | Traders Trust 口座開設フォームより、 「法人」を選択して口座開設 |
必要書類詳細 | |
〇 | Tradeview 法人口座開設フォームより、 口座開設 |
必要書類詳細 |
編集部の
コメント
海外FX業者の法人口座は、個人口座と比べてケースバイケースで対応されることも多いため、分からないことがあれば海外FX業者に問い合わせてみるのがよいでしょう。
法人口座を検討するときは専門家に相談しよう
この記事では、海外FXの法人口座を利用することのメリット・デメリットを紹介してきました。海外FXの法人口座を利用して、節税のメリットが得られるかどうかは個々の状況によって様々です。とりわけ、サラリーマンが副業としてFXをするときに、海外FXの法人口座を利用する効果があるかどうかは、法人をどのように活用するかという部分が大きく関わってきます。FX取引の他にもアフィリエイトやライター業などで利益が一定以上出ているのであれば、検討する価値があるかもしれません。
更に、海外FXで法人口座を保有するにはそれぞれの業者ごとに審査があり、法人を設立しても必ず口座開設できるとは限りません。実際の法人設立や納税業務などの詳細は、FX法人を専門にしている税理士やコンサルタントに相談してください。当社で掲載されている海外FX業者は、XM Trading(エックスエム)以外の全ての業者で法人口座の開設が可能です。最新の海外FX業者人気ランキングでスプレッドやボーナスなどの他の条件を参考にしながら、法人口座を開設する海外FX業者を比較してみてください。
編集部の
コメント
FXで毎年安定的に利益を上げられるのが理想ですが、万が一損失を出してしまった場合でも、損失繰越制度が利用できれば支払う税金を抑えられます。海外FX法人口座の大きなメリットです。