トレード手法関連
「損切りが、なかなかできない。」
「あともう少し待てば、相場が反転するかもしれない・・。」
損切りについて悩んでいるトレーダーは多いと思います。FX初心者でも経験を積んでいる中級者になっても、損切りをすることは心理的に抵抗があるのではないでしょうか。でも、これは自然な感覚です。
長年の経験があるFX上級者でも、損切りをすることは簡単ではありません。トレーダーであれば避けて通れない「損切り」という考え方は、FX取引で特に重要です。損切りができるかできないかで、利益も大きく変わります。
有名なトレーダーもヘッジファンドも、もちろん損切りを行います。勝率100%の手法、いわゆる「聖杯(せいはい)」はないからです。どんな手法でも「損切りをしなければいけない」相場があります。
損切りをためらってしまいそうなとき、トレード手法の全体で利益を得るという考え方、損小利大トレードが大きな利益を得るのに必要であることを思い出すと気持ちが楽になります。
そうは言っても、すぐに損切りができるようになるのは難しいと思います。この記事では、損切りの重要性や、具体的な損切りのルールなどを私の経験を含めながら解説していきます。
損切りには、固定Pipsやボラティリティによる損切り、節目ラインやインジケータを用いた損切りなど様々な方法がありますので、この記事を参考に、自分に合った損切り方法を探してみましょう。
具体的な損切り方法を先に知りたい方はこちらの章から読んでください。
知りたい情報 TOP3(ここを読めば解る)
損切りすることは利益につながる
損小利大がトレードには大切
FXは「総合的に利益を出す」というのが最終目標です。勝率100%のいわゆる「聖杯(せいはい)」は存在しません。どんな手法でも勝てない相場があります。
巨額の資金を動かすヘッジファンドや機関投資家、プロトレーダーも損切りをします。なぜ収益があるのかというと、「利益が損失を上回っているから」です。
私たちも「リスクリワード」を意識する必要があります。リスクリワードとは、リスク幅(損切り幅)に対する利益幅のことです。一般的には、「リスク:リワード=1:2以上」がよいといわれます。
以下のチャートにまとめてみました。
上の例で言えば、損切り幅を30Pips、利益確定幅を60Pipsに設定したときがリスクリワードが1:2です。これが1:2以上になっていると、全体として利益が出る確率が高くなります。リスクリワードが1:2になっていると、損失になったトレードと利益トレードが同じ回数、つまり勝率50%でも、トータルでは利益を残すことができるからです。
リスクリワードを1:2にするためには、損切りは早めにするのが重要です。損切りが深くなるほど、利益幅も大きく狙わないと、リスクリワードで十分な比率になりません。
損切りで心掛けたい3つのポイント
この章では、損切りに大切な3つのポイントを解説していきたいと思います。
エントリー前に損切りポイントを決める
「トレード計画」という言葉を、聞いたことがあると思います。トレーダーによっても異なりますが、大抵は、インジケータやチャートの形を考えて、どこでエントリーするかを考えると思います。
ただ、エントリーのときに「損切り」まで決めているという人は少ないかもしれません。利益を得るためのFXトレードなのに、損切りのことなど考えたくないと思ってしまうからです。
また、とりあえずエントリーしてからじっくり考えようと思っているトレーダーもいます。
しかし、ポジションを保有してしまうと、損失を出したくない気持ちから、自分の都合のよいように相場を解釈してしまう可能性が非常に高くなります。とりわけ、大きな含み損が発生している状況だと、「ここのラインで反発するはず!」とか「ここは節目だから必ず反転する!」と自分を納得させてしまうことが多くなります。
このような状況を避けるため、エントリーの際にはIFO(アイエフオー)注文を使うのがおすすめです。IFO注文とは、新規注文と同時に、その注文が成立したときに有効になる指値注文(利益確定ポイント)と逆指値注文(損切りポイント)の2種類を発注しておく注文方法です。海外FX業者の採用するMT4/MT5でもIFO注文が可能です。
MT4での新規注文画面です。F9を押すと、上記の画面が表示されますので、ここで①決済逆指値(損切りポイント)と②決済指値(利益確定ポイント)を設定します。この画面は成行注文の場合ですが、指値注文や逆指値注文でエントリーする場合も同様に設定できます。
エントリーをしようと思ったら、「損切りポイントはどこだろう」と同時に考えてみましょう。ポジションを保有する前に「相場がどのような状態になったらポジションを決済するか」を決めておくと、価格がどのように変動したとしても冷静に判断できるようになります。
これが上級トレーダーへの第一歩です。
相場の反転を期待しない
トレーダーなら誰でも共感すると思うのですが、「損切りをした瞬間、相場が反転する」というのを経験したことがあると思います。
まるで誰かが、自分の損切りを待っていたかのように相場が動くのです。(本当に怖いぐらいに・・・。)自分が損切りをした価格が最高値/最底値ということもあります。
「損切りをせず、我慢すればよかった・・。」という後悔の感情が出てくると思います。もちろん、損切りをした後に相場が予想した方向へ戻る可能性もありますが、ほとんどの場合、そのまま損が大きく膨らんでいきます。相場の反転を期待して損切りをためらってしまうと、大変なことになりますね。
とりわけ、逆張りエントリーをするトレーダーは注意してください。例で解説してみます。
相場はレンジ相場とトレンド相場の繰り返しです。逆張りエントリーポイントで有名なのがレンジ相場の上限/下限ですね。
レンジ相場が機能しているときは利益が出やすいのですが、レンジをブレイクしたとき(①)には損切りをする必要があります。ダマシの可能性もありますが、トレンド相場に発展していく可能性があるからです。
もしこの場合に、レンジ相場が継続することを期待し、①で買いエントリーをしていたら、一度も含み益になることなく損失が膨らんでしまいます。損切りをためらって相場が反転することを期待していたら、おそらく、強制ロスカットになり、大きく資金を失ってしまうことになります。
上記は一例ですが、私の経験でも含み損が膨らみつつあるときに相場の反転を期待しても、ほとんどは失敗に終わってしまいます。
発展的な内容ですが、MAE(最大逆行幅)の考え方を紹介します。
結論から言うと、利益が出るポジションのほとんどは、エントリーした直後から予想どおりの動きをします。つまり、予想以上の含み損になったポジションが利益になる確率は、極めて低いということです。
含み損の最大値幅を「MAE(最大逆行幅)」と呼びますが、私の経験上、過去に利益が出ているポジションのほとんどは、MAEが極めて小さい数値となっていました。このMAEの考え方が気になる方は、「Myfxbookでトレード成績を検証しよう【実践編】」の記事をぜひご覧ください。
トレードスタイルや時間足を変更しない
含み損があるときに、やってはいけないことの1つが「トレードスタイルや時間足を変更する」ことです。
例えば、1時間足のチャートを根拠にエントリーしていたとします。残念ながら、予想よりも含み損が出てきてしまい、もう少しで損切り価格になりそうだとイメージしてみてください。
「もっと上位足ならどうだろう」とか「スイングトレードに変更しよう」と考えてしまうトレーダーもいます。このようなトレーダーは損切り価格を変更したり、より上位足の抵抗帯を探して損切りをしない理由を探し始めたりしてしまいます。
豪ドル(AUD/USD)の1時間足と日足を並べてみました。1時間足では下降トレンドですが、日足で見ると約6ヶ月間の大きな上昇トレンドが続いています。
豪ドルの1時間足で買いエントリーして、含み損が膨らんできたとき、「日足は上昇トレンドだから、いずれ元の相場に戻る」と考えてしまうかもしれません。でも、実際には、最初から1時間足を想定してエントリーしているので、ポジション量も心理的にもトレーダー側の準備ができていません。
日足チャートを考えるならば、日足チャートの分析もする必要がありますね。
つまり、上がるか下がるか分からない「ギャンブルトレード」になってしまいます。これでは、仮にそのトレードで含み損が解消できたとしても、継続して利益を出すことはできないと思います。
エントリーしてから損切りを避けるための時間足やトレードスタイルの変更はしないようにしましょう。
様々な損切りルールを知ろう
この章では、具体的な損切りのルールを紹介していきます。
固定Pipsの損切り
トレーダーの中には「30Pipsで損切り」「マイナス〇〇円で損切り」というルールにしている方もいます。一般的によく用いられている損切り方法です。
この方法の強みは「リスクリワードを明確に理解できること」です。エントリーする前の段階で、どこで損切りをして利益を確定するのかが明確に分かっているのでエントリーポイントを待つだけですね。FX初心者の方でも、非常に取り組みやすいと思います。
とりわけ、ライントレードや節目価格での逆張りトレードに有効な損切りルールだと思います。
損切り貧乏という言葉を聞いたことはあるでしょうか。FXで大切な損切りをしているにも関わらず、なかなか収益が上がらないという状況のことです。
なかなか損切りができなくて一度のトレードで大きな損失を抱えてしまう人もいるのですが、損切りができるようになると、今度は「損切り貧乏」という壁に当たってしまうトレーダーが多くいます。
損切り貧乏になる原因は「エントリー回数が多すぎること」「リスクの幅が口座残高に対して大きすぎること」が考えられます。損切りもFXで大切なのですが、バランスが重要ですね。エントリー、利益確定、損切り、資金コントロール、メンタルコントロールなどの要素が組み合わさっています。1つ1つ自分の弱点を見つけて、壁を乗り越えていきましょう。
ボラティリティによって損切りポイントは異なる
ボラティリティとは、チャートの値動きの幅(大きさ)のことです。
ここでは、複数通貨のトレードをするトレンドフォロートレーダー向けの損切りルールについて解説します。
例えば、ドル円であれば1日に平均して60Pips程度のボラティリティです。一方、ポンド円は1日に平均して120Pips程度のボラティリティがあります。通貨ペアによって、1日にどれだけ動くかが大きく異なります。
ドル円とポンド円の両方を取引するトレーダーが固定Pipsで損切りルールを決めていたら、根拠のない損切りが続いてしまう可能性が非常に高くなります。
おそらく、2~3通貨ペアの取引をするトレーダーがほとんどだと思いますので、通貨ペアごとのボラティリティを把握しておくことが重要です。
私のおすすめは、通貨ペアの性質に合わせて損切りポイントを設定する「ボラティリティ損切りルール」です。活用するのは「ATR(Average True Range)」というボラティリティを計測するインジケータです。
ATRは、指定した本数の時間足の値動きを集計し、時間足1本あたりの平均の値動きを算出してするものです。基本のATRのインジケータは、MT4/MT5に標準搭載されていますが、見やすくするために、価格レートにATRを足したラインをチャートに表示させるカスタムインジケータ(PZ Super Trend)を使用しました。
GBP/JPY(ポンド円)とUSD/JPY(ドル円)の1時間足チャートを並べて、ATRを2倍にしたラインを表示させるとこのようになります。ATRが時間足1本分の値動きの平均値なので、時間足2本で値動きすると予想されるラインということになりますね。これを基に損切りポイントを計算します。
例えば、GBP/JPYの1時間足のボラティリティは平均22Pipsです。一方、USD/JPYの1時間のボラティリティは平均10Pips程度となっています。通貨ペアによって、予想される変動幅が異なりますので、損切りルールを変える必要がありますね。
先ほど、利益が出るポジションは、大きな含み損が発生する確率は極めて低いとお伝えしました。エントリーした価格から、1時間で変動する平均値幅の2倍逆行したとき、予想とは違う動きであると判断して損切りをするという方法が「ボラティリティ損切りルール」です。
デイトレーダーの私は平均ボラティリティの2倍の値幅を相場が逆行したら、損切りをするというルールを持っています。
スイングトレーダーであれば平均ボラティリティの3倍~5倍というトレーダーもいますし、ある機関投資家は「10ATRで損切り」というトレードルールにしていると書籍で紹介されていました。
ボラティリティを基準に損切りをするというのは、海外トレーダーの中では一般的なのですが、日本ではあまり知られていないかもしれません。
節目ラインやインジケータを使う方法
110.000円などキリのいい価格である節目価格や、インジケータを使った損切り方法もあります。順張りトレードでも逆張りトレードでも有効で、活用しているトレーダーも多いのではないかと思います。
主なインジケータやラインを使った損切りルールを以下の表にまとめてみました。
インジケータ等の損切りルール
ルール | 例 |
---|---|
相場の節目 | 過去の相場で抵抗/支持となった価格(水平線)やラウンドナンバーを下回った場合 |
移動平均線 (期間120) |
1時間足であれば、移動平均線(期間120)を終値で下回った場合 |
RSI (期間24) |
1時間足であれば、RSI(期間24)=50を下回った場合 |
MACD | ヒストグラムが0を下回った場合 |
意外とオシレータ系指標も損切りルールに活用できます。RSIや節目ラインについては、下記の記事で詳しく解説しています。
直近高値/安値を考える
直近高値/安値で損切りをするというルールもあります。「ダウ理論」では、高値・安値の切り上げ・切り下げでトレンドが発生していると判断し、それが崩れたらトレンドも崩れたと判断します。
高値・安値は、私の記事でよく登場するインジケータ「ZigZag」で表示させました。
ドル円の1時間足チャートで見てみましょう。赤い線は、高値・安値を示すZigZagです。買いポジションを保有しているとイメージしてみると、上昇トレンドが落ち着いてきている状況と分析できますね。
上記のチャートで考えると、許容リスクにもよりますが、直近安値の105.000付近か、その前の安値の104.800付近のどちらかで損切りをする必要がありますね。終値で104.800付近を割った場合、下降トレンドが発生と考えます。
上昇する確率が少なくなったら、損切りを検討しましょう。
エントリー根拠がなくなった場合
これまで、主に4つの損切りルールを紹介しました。このように、損切りルールを別に設定する方法もありますし、「エントリー根拠がなくなった段階で損切り」という方法もあります。
例えば、移動平均線を上回った段階でグランビルの法則によりエントリーした場合には、移動平均線を下回ってしまった段階で損切りをするなどです。その他にもこのようなルールが考えられるでしょう。
エントリー根拠がなくなった場合の損切り
エントリー根拠 | 損切り |
---|---|
ボリンジャーバンドの2σを終値で下回り、 バンドウォークを期待した売りエントリー |
利益目標まで届かず、ボリンジャーバンドの2σを 終値で上回った場合 |
RSI=30で反発を期待した買いエントリー | RSI=25以下になった&トレードルールで決めた 固定Pipsを超えた場合 |
(まとめ)損切りがFX成功の最短ルート
ここまでFXの「損切り」に注目して解説してきました。
FX取引を始めて最初にぶつかる壁だと思います。損切りはどれだけ経験を積んでも心理的につらいことに変わりはありません。しかし、リスクを取らなければ大きなリターンを期待することはできません。
スポーツでも受け身が大切と言われます。上手な負け方を身に付けていないと、本番の試合で勝てないどころか身体を痛めてしまう可能性があります。
それと同じで、FXでも「上手な負け方」を身に付ける必要があります。損切りは決して恥ずかしいことでもありません。リスクコントロールをして、大きな損失になるのを自ら止める行動です。
いろいろな損切り方法がありますので、自分のトレードスタイルや性格に合った損切り方法を試してみましょう。また、できるだけ損切りを減らす工夫も大切です。例えば、トレーリングストップを活用する、エントリーを厳選する、ロット数を少なめにするなどができると思います。
損切りができるようになることが、FXで総合的に収益が出るようになる第一歩です。
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