トレード手法関連
相関性に注目した投資手法は多くあります。その中でも、「サヤ取り」「オプション売り」「サヤ滑り取り」は、世界三大利殖法といわれ、大口の投資家を始め多くのトレーダーが活用しています。
この記事では、初心者の方でも始めやすい、海外FX業者を利用したFXサヤ取りトレードの具体的な方法について解説していきます。
知りたい情報 TOP3(ここを読めば解る)
この記事の目次
相関性を利用した「サヤ取り」トレードの仕組み
相関性って、どんなこと?
海外FX業者でトレードするとき、一般的な国内FX業者と比べて豊富な通貨ペアやCFDなどの銘柄から選択することができます。
それぞれの銘柄は、相互に影響し合いながら価格を形成しています。市場間を超えてFX通貨ペアと先物銘柄が相関性を持つこともあるのです。
過去の動きを見て似たように連動しているからといって、これらの銘柄が今後も似たような値動きをするとは限りませんが、将来的にはかなり高い確率でその値動きを予想することができます。
相関関係とは、二つの銘柄(通貨ペア/CFD)が互いに影響し合い、一方が変化すれば他方も変化するような関係を指します。同じトレンド方向に動いていく関係性を「正の相関」にあると呼び、鏡のように反対の動きになる関係を「負の相関」または「逆相関」であると表現します。両者が全く関係なくバラバラな動きをする場合は、「無相関」といいます。
また、その値動きがどの程度似ているかを表す指標が「相関係数」です。相関係数は、プラス1に近いほど同じような動きをしますし、マイナス1に近いほど正反対(逆相関)の動きになります。
「サヤ取り」とは何か
一般的に知られている「サヤ取り」とは、商品先物や株式などの投資において、買いポジションと売りポジションを同時に保有し、二つの価格差から利益を得ることを目的としたトレード手法のことをいいます。このトレード手法は、裁定(さいてい)取引またはアービトラージという呼び名でも有名ですね。
FX取引では、値上がり/値下がりしそうな銘柄を売買して利益を得るという仕組みですが、サヤ取りのイメージは異なっています。
この記事で紹介するサヤ取り手法は、相関性をもって変動している通貨ペアのチャートが一時的に別トレンド方向に変動したときを狙って逆張りエントリーします。
相関性がある銘柄同士であれば、いずれトレンドが修正されて、また同じトレンド方向になる可能性が高いと期待できるからです。
「サヤ取り」をトレードに利用するメリット
サヤ取りトレードとは、相関性の高い2つの銘柄(FXなら通貨ペア)で売りと買いのポジションを同時に建て、利益が出たら同時にポジションを決済する方法です。
この二つの銘柄の価格差を「サヤ」といいます。
相関性の高い銘柄間のサヤだけに注目していますので、価格変動の影響を受けにくいのが大きなメリットです。
過去の実績に基づいてトレードしますので、比較的安心して始めることができることです。
「サヤ取り」は、商品先物取引でよく使われる「サヤ滑り取り」とは異なる手法です。
相関性を使ったトレードの例
相関性を利用したトレード手法の例
相関性を利用したトレードには、さまざまな手法がありますので紹介します。
サヤ取り
相関性の高い異なる銘柄の差を狙った取引
動きが似ている相関性の高い通貨同士で、通常見られる価格差が大きく開いた状態を狙ってトレードする取引きです。「ストラドル」とも呼ばれています。
上の図では、銘柄Aと銘柄Bのレートは一時的に開いていますので、銘柄Aで売りポジションを、銘柄Bで買いポジションを持ちます。両方とも価格レートが上昇していますが、銘柄Aに比べて銘柄Bの上昇率が高いため、両方とも決済した場合、その差額の利益となります。
もし、両方の価格が下がった場合でも、価格差が小さくなれば利益が出ます。
今回の記事では、この手法を解説します。
LTCM(ロングタームキャピタルマネジメント)は、1994年から1998年まで存在した米国の巨大ヘッジファンドです。経営陣はノーベル経済学賞受賞者をはじめとする高度な金融理論の専門家で構成されており、まさに夢のチームでした。LTCMは、債券の裁定取引(割高な債券を売り、割安な債券を買って価格差が収束するのを待つ手法)を行っていました。当初は高い業績を上げていましたが、高すぎるレバレッジと専門家でも予想できなかった出来事に巻き込まれ、数年後には破綻してしまいました。
スワップポイントの差を狙った取引き
異なる業者を利用して両建てする手法です。例えば、買いのスワップポイントが高い業者で買いポジションを持ち、売りのスワップポイントが低い業者で同じ通貨ペアの売りポジションを持ちます。この場合、同一の通貨ペアでの両建てをしているので、値動きに影響されません。仮に、スワップポイントが変動しないなら半永久的にその差額が入り続けることになります。
ただし、ハイレバレッジが特徴のほとんどの海外FX業者では、異なる業者間での両建てが禁止されているため、このような取引はできません。両建てには、①同一口座間での両建て、②異なる口座間での両建て、③異なる業者間での両建ての3種類がありますが、②や③は禁止されている業者が多いです。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
アービトラージ
地理的な条件を利用した取引き
この方法は別名「レイテンシーアービトラージ」とも呼ばれています。FXの場合は、取引所という概念がなく地理的条件がほとんど影響されませんので、FX業者のサーバー設置場所や性能の違いなどによる価格提示時刻の差を狙います。しかし、全世界を超高速インターネットで網羅している現在では、リアルタイムでその出現を捉えることは難しく、個人投資家が実際に継続して利益を上げることは困難でしょう。同一口座間以外の両建てと同様、多くの海外FX業者で禁止行為とされています。
取引形態の仕組みを利用した取引き
FX業者には、DD方式とNDD方式があります。このうち、DD方式は顧客(トレーダー)とFX業者の「相対取引」となる方式です。
DD方式のFX業者は、それぞれの提示する価格レートが微妙に異なります。また、DD方式とNDD方式方式では価格提示までの流れが若干異なりますので、重要指標発表後など、大きく相場が動いたときに価格差が生じることがあります。その差を狙うわけですが、最大の格差を捉えるタイミングやスプレッド、約定力などを考慮すると、この手法もかなり難しいでしょう。
海外FX業者では、「いかなる種類のアービトラージも禁止」というルールを設定している場合が多いです。そのため、①も②も実際に行うのは推奨しませんが、このような形のトレードも存在します。
海外FX業者ならではの組み合わせパターン
海外FX業者は、通貨だけでなく商品先物CFDや指数などの取引きができます。また、実際に売買にしなくても、変動するレートを指標としながらトレードできます。
商品先物CFDの場合、その銘柄のレートと、その商品を産出している国の通貨のレートに相関性が生じます。例えば、原油価格とカナダドルの関係などが有名です。また、WTI原油やブレント原油など、同じような値動きをする傾向のある商品銘柄同士を組み合わせて分析することもできます。
銘柄の組み合わせと関係性
銘柄の例 | 関係性 |
---|---|
USDCAD⇔WTI原油 | 逆相関 |
AUDUSD⇔銅先物 | 正の相関 |
コーン⇔大豆 | 正の相関 |
WTI原油⇔ブレント原油 | 正の相関 |
ゴールド⇔シルバー | 正の相関 |
銅先物⇔日経225 | 正の相関 |
海外FX業者によって取引できる商品が異なり、XMTrading(エックス エム)は商品銘柄が豊富です。また、CFD商品はFX銘柄と比べてレバレッジが制限される業者が多いですが、Titan FX(タイタン FX)はCFD商品もレバレッジ500倍でトレードできるというメリットがあります。
サヤ取りトレードの注意点
サヤ取りトレードには、通常のトレードとは異なる点に注意する必要があります。
通貨ペアの場合、表示位置に注意
ほとんどの銘柄(通貨ペア)は米ドルを中心にして取引されますので、基軸通貨である米ドル(USD)が表示される位置によって、売買が逆になる場合がありますので注意してください。
また、合成通貨ペアと呼ばれる銘柄には、既に相関性の高い2つの通貨ペアが組み合わさっているものがありますので、相関性を考える上で参考になると思います。
【例】
- AUD/NZD ⇒ AUD/USDの買いとNZD/USDの売りは、AUD/NZDの買いと同じ
- EUR/GBP ⇒ EUR/USDの買いとGBP/USDの売りは、EUR/GBPの買いと同じ
- CHF/JPY ⇒ USD/CHFの買いとUSD/JPYの売りは、CHF/JPYの売りと同じ
決済期限に注意
CFD銘柄の中には、決済期限のある銘柄がありますので、保有期間が長くなる場合には注意が必要です。
決済期限は、各FX業者の公式サイトや、MetaTrader4(MT4)/MetaTrader5(MT5)上で確認することができます。XMTradingの場合、取引銘柄のぺージの「カレンダー」タブで確認できます。「満期」と書かれた列が決済期限です。
ロット数の計算が難しい
異なる銘柄間での損益幅を均衡させるには、買いポジションと売りポジションのロット数を調整させることが必要です。エクセルなどの計算ソフトで事前に算出できるよう計算式を組んでおくと便利です。
相関トレード手法の紹介
インディケータの導入
ここからは、具体的な相関トレードの手法を紹介していきます。今回は、無料で入手できる次の2つのインディケータを利用します。
他の銘柄との相関の推移を表示させたり、相関関係を一覧で表示させたりできますので、とても便利です。通貨ペアだけではなく、商品や指数などのCFDとの相関も表示できます。
Correlation Statistics Pro
Multi Symbols in The Same Chart
上記リンクをクリックすると、MetaTrader4(MT4)/MetaTrader5(MT5)を開発したメタクオーツ社が運営する、MQL5コミュニティへのリンクが開きますので、インディケータをダウンロードしてください。
ダウンロード方法は、こちらの記事の第3章で紹介しています。
ペアとなる銘柄の選定
まず、「Correlation Statistics Pro」を使って相関関係の強い銘柄を探します。このインディケータは、あるFX業者で取引できる全ての銘柄を比較し、指定した期間内でどの程度の相関関係があるかを%で表示するものです。
インディケータが無事にMT4へインストールできましたら、下記の手順で設定を行います。
「パラメーターの入力」タブの「IndicatorType」から「PercentagesPanel」を選択します。
次に「Periods」を100に変更します。
「PanelDisplayedInstruments」から「ALLAvailableInstruments」を選択します。
さまざまな銘柄との相関性が、一覧となって数値で表されました。
上のチャートでは、日足100本、つまり100日分の期間で見た場合のEURUSDとの相関が表示されています。緑色で表示されている銘柄は正の相関、赤色は逆相関です。この中から相関性の高い通貨ペアや銘柄を探してみましょう。
各銘柄の右側に表示されている数値(相関係数)が80%以上かマイナス80%以下が理想的です。
相関グラフの表示
銘柄が選定できましたら、「Correlation Statistics Pro」の設定を変更して、相関グラフを表示させます。
ここでは、例としてEURUSDとCHFJPYの組み合わせでセットしてみます。
EURUSDのチャートの上にこのインディケータを貼りつけ、「パラメーターの入力」タブの「CompareTo」に銘柄名(CHFJPY)を入力して下記のように設定します。
枠で囲った緑色のラインが相関性の強さを示したグラフです。上部は正の相関の動き、下部は逆相関です。
次に、Multi Symbols in The Same Chartを使用して二つの銘柄のチャートを重ねて表示させます。EURUSDのチャートの上にこのインディケータを貼りつけ、「パラメーターの入力」タブの「symbol1」に銘柄名(CHFJPY)を入力して下記のように設定します。
デフォルトでは赤色のローソク足で表示されますので、「色の設定」タブでお好みにより変更してください。本記事では、色を変えてあります。
上図のように2銘柄を合成したチャートは、重なっていたり開いていたりしているように見えますが、後から付け足したCHFJPYのチャートはEURUSDの価格レートとは異なっていますので、注意が必要です。重なっているように見える部分も価格が同じというわけではなく、実際には価格差が存在しています。
具体的なトレードの手順
ここでは、具体的なトレード方法を一例として紹介します。
手順1)長期のチャートで相関を調べる
まず、週足での相関を調べ、相関の強い銘柄の候補を選定します。
次に、日足での相関を見て、候補を絞っていきます。
手順2)1時間足か30分足で、離れ具合を確認する
これから広がっていくのではなく、閉じる方向に動いているペアを特定します。
手順3)ロット数を計算する
二つの銘柄を保有したときに、バランスが取れるようにそれぞれのロット数を計算します。
手順4)エントリーする
相関性を表すグラフを見ながら二つのチャートが開いたときにエントリーします。チャートのどちらかに長いローソク足が出て、サヤが開いたときは狙い目です。
手順5)決済する
銘柄ごとに偏差の分析などを行なっていないようであれば、早めの利益確定がおすすめです。
相関トレード手法を成功させるコツ
相関関係の強弱について
サヤ取りでは、相場の上昇・下落に対するリスクを少なくするために、いつも同じような動きをする銘柄を見つけ出す必要があります。
紹介したインディケータで相関関係の強い銘柄を選択することができますが、現在だけ強い相関を示している銘柄を選択してもサヤ取りがでません。
いつも連動している銘柄、つまり相関関係が強い銘柄が、一時的にバランスを崩したときにエントリーして売買両方のポジションを持ちますので、1時間足など小さな時間軸で表示される相関関係が低く表示されている銘柄もチェックが必要です。
デモ口座で試してみよう
サヤ取りトレードの場合、そもそもの価格レートやボラティリティが異なる銘柄を保有しますので、必ず事前にシミュレーションを行なってください。各銘柄の特徴を事前に知っておくことは重要です。
海外FX業者では、ほとんどの業者でリアル口座と同様の条件のデモ口座を提供しています。やや条件が異なる業者もありますので、詳細はこちらの記事で確認してください。
慣れるまでは小ロット、低レバレッジで始める
利益をゆっくり積み重ねていくトレードですので、いつまでも保有し続けてしまうリスクがあります。これは、逆に言えば損切りのタイミングを見逃してしまって、損を大きくしてしまうことになります。
また、1銘柄で行なう「両建て」ではありませんので、常に損益が発生します。
相関関係の歪みは常に変動していますので、長期的に見ると相関係数がプラス95以上の時もあれば、時間を短くして見れるとマイナスになることもあります。
慣れるまではレバレッジを低くして小ロットでナンピンしていく方法をオススメします。また、例えば、指標としてる相関係数が0以下になったら損切りするなどの基準を持っていた方が安心です。
禁止事項は守る
FX業者によっては、次の手法は口座凍結や出金停止のリスクがありますので、事前に調べておいて、禁止事項であれば絶対にやらないようにしましょう。今回紹介したトレード手法のように、相関関係を利用して複数の銘柄の間でトレードする場合、通常は問題になることはありませんが、スワップ目的などで同じ銘柄を両建てする場合は禁止している海外FX業者がほとんどです。海外FX業者の主な禁止事項は下記の通りです。
- 複数口座間での両建て
- ゼロカットを狙った両建て
- ポイントやボーナスの差を利用した両建て
- 一つの通貨をヘッジするための両建て
さらに取り組みたい方へ
相関を使ったトレードをさらに取り組みたい方は、次のような手法もありますのでご紹介しておきます。
1.相関する銘柄の価格差を標準偏差で分析する。
エクセルなどを使って、過去のデータを確率で分析します。確率的に少ない歪みのみを捉えて投資します。
2.銘柄独自のタイミングを調査する。
例えば、通貨であれば重要指標の前には動きが鈍くなる傾向があります。しかし、商品などはそのまま動き続ける場合もあります。ここに、今まで連動していた銘柄の間に価格差が発生します。
3.巨大な動きにタイミングを合わせる。
NYダウやS&Pなどの急な動きは、全世界の様々な銘柄に影響します。特に、重要指標の発表などで急落した場合は、連動して一斉に値下がりする銘柄はとても多いのです。しかし、元の値に戻る回復時間や動きをみると、いち早く戻る銘柄もあれば、様子をうかがいながらゆっくりと戻っていく銘柄もあります。この場合、売りと買いを逆にして、両者が離れていく方向に仕掛ける方法もあります。
4.サイクル理論を応用する。
かなり専門的な分析が必要ですが、一定期間ごとに値下がりしたり、値上がりしたりする特徴を捉えて投資します。それぞれの銘柄が持っているサイクルのズレを利用したり、季節や経済の周期などを利用したりします。
(まとめ)他の銘柄でも試してみよう
今回の記事では、相関関係を利用したトレード手法を解説してきました。既にお気付きのように、意外な組み合わせに相関関係があります。
通貨ペア同士だけではなく、CFD(貴金属、コモディティ先物、エネルギー先物、株価現物指数、株式先物指数)も含めると、いろいろ試してみたくなるに違いありません。
また、この他に、市場では景気を判断する様々な指標が発表されています。例えば、木材先物を景気の先行指数と考えて、米株式や日経に投資しているトレーダーもいるようです。
通貨ペアやその他の銘柄同士の相関性を意識すれば、トレードの優位性が見極められるようになるでしょう。