今年、大きな話題となっている「フィンテック」とは(前編)
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最近、ニュースや新聞などを通じて「フィンテック(Fintech)」という言葉を目にする機会が増えていると思います。このフィンテックとは、アメリカで作られた造語であり、金融を意味する「ファイナンス(Finance)」と、技術を意味する「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた言葉です。
金融とITとの融合がフィンテック
これまで金融業は規制が大きく、新規参入するには大きな障壁がありました。しかしITが進化することによって個人やスタートアップ企業でも金融業へと進出できるようになりました。それこそがフィンテックの真骨頂となります。
これまでも既存の金融機関は常にITを活用していました。しかしフィンテックはそれとは異なり、金融とITを掛け合わせた領域のことを指しています。
将来、さらに普及することにより金融サービスが大きく変化し、世界が変革する可能性を秘めているという、このフィンテックとは一体なんなのでしょうか?
フィンテックが大きくなったのはリーマン・ショックがきっかけ
フィンテックという言葉が生まれたのは2003年頃のことです。しかしフィンテックが大きく飛躍するきっかけとなったのは、2008年9月15日に発生したリーマン・ショックでした。
リーマン・ショックの影響が大きくなるにつれてアメリカの金融機関で大規模なリストラが行われ、少なからずの人材がIT企業へと転職してフィンテックを生み出したり、フィンテック企業を起業したりしたのです。いわば、ウォールストリートからシリコンバレーに多くの人材が異動したというわけです。
アメリカにおけるフィンテックは、このように10年近い歴史がありますが、日本でフィンテックが大きくクローズアップされたのはここ2、3年のことになります。日経新聞でフィンテックという単語が初めて使われるようになったのは2014年ごろのことですので、一般的に認知されてから日が浅いというわけです。
日本で誰でも知っているフィンテックはというと、携帯電話と電子マネーの融合であるおサイフケータイや、銀行振り込みや資金移動などがインターネット経由でできるネットバンクが一例に挙げられます。
また近年話題となり世界を席巻しているビットコインについても、ITが無ければ生まれなかった仮想通貨であり、フィンテックだといえることができます。
すでに身近となってきたフィンテックサービスも存在
フィンテックがカバーするサービス領域は、家計簿・会計ソフトウェアなどから、資産運用、貸し付け、決済など多岐にわたるものとなっています。内容としては、金融貸付ビジネスのほか、パーソナル・ファイナンシャル・マネジメント(PFM)や決済システム、資産運用関連、銀行インフラ系など、さまざまに広がっています。
またフィンテックには、Google、Amazon、Apple、Facebookといったシリコンバレーの代表的な大手ITベンチャー企業のほか、さまざまなスタートアップ企業や個人起業家が参入してきています。
そこで開発されたフィンテックには、すでに生活に身近なサービスとなったものも存在します。その代表的なものがモバイル決済です。
それまで高額なPOSレジやサイズの大きなカード決済端末が必要となっていたものが、フィンテックによりスマートフォンやタブレットに小型のクレジットカードリーダーを挿し込むことで、クレジットカード決済が行えるようになりました。
このモバイル決済システムを開発したのはSquare(スクエア)です。この企業はアメリカで2009年に設立されたばかりのスタートアップ企業で、今では日本でも大きく展開しています。このようなスタートアップ企業が決済端末を開発し普及させるということは、フィンテックがなければ考えられない出来事でした。
また、インターネット環境を介して自動で家計簿をつくることができるクラウド家計簿や会計処理ができるクラウド会計も、フィンテックとして有名なサービスです。
従来、家計簿を付けるには1つ1つ、手書き、あるいは入力していく手間がありましたが、クレジットカードやネットバンキングのネット明細書や電子マネーの利用履歴などをひとまとめにし、自動で家計簿を付けてくれる仕組みがクラウド家計簿です。
クラウド会計に至っては、経費なども自動的に記帳できますので、この仕組みで個人事業主や中小企業経営者は、経理コストを大幅に削減することができるようになったのです。
このような仕組みはフィンテックだからこそ、実現したものといえます。
金融機関しかできなかったサービスもフィンテックで実現
フィンテックは既存の金融機関をも変えていこうとしています。
フィンテックの登場により、これまで独占的に提供し、変化に乏しかった従来の金融機関がリリースしている金融商品やサービスを、ユーザー目線から「安く、早く、便利」に変えていこうとする動きが活発化してきているからです。
先ほど書いたモバイルPOSサービスを始めとして、個人のお金に関わる情報を統合的に管理するサービス「PFM」(Personal Financial Management)やAI(人工知能)活用による投資助言サービス「ロボアドバイザー」、資金の貸し手と借り手を仲介するサービス「マーケットプレイス・レンディング」などは、既存金融機関にも浸透していくサービスがある一方、既存金融機関のサービスを侵食している場合もあります。
例えば「マーケットプレイス・レンディング」は、既存の銀行などから融資が断られた事ブローカーに対しても資金を調達する道を開いています。資金を借りたい事ブローカーは、借りたい金額、事業内容、売り上げといった必要な情報を入力し、インターネット上で申請します。
そうすると、その事ブローカーの経営状態を審査し5段階で格付けします。金利は格付けに応じて、5~22%程度の間で設定されます。資金を貸したい人はその格付けをホームページ上で確認し、共感できる企業に融資するという仕組みとなります。
これまで大手金融機関でなければ不可能だった事ブローカーへの融資サービスを、フィンテックで実現しているのです。
また、消費者金融の分野にもフィンテックは進出しています。信用力が低く、既存の金融機関ではクレジットカードを作れない人たちがいます。そういった対象者に対して、SNSでの評判や登録されている経歴、日頃どのような買い物をしているのか、文字の入力の仕方はどうか、細かなデータを分析し融資を実行している会社もあります。
その対象者と似たような属性や傾向を持っている人たちの事細かなデータを分析することで可能となったこのサービスは、既存のカード会社より8ポイント程度低い金利での資金提供を可能にしながら、利益を上げているのです。
このような仕組みはITが発展していなかったらできなかったことであり、まさにフィンテックだということができます。
フィンテックが世の中をさらに便利に変えていく
このように「ITを駆使することで金融をより身近なものにしよう」というのがフィンテックのベースとなる考え方です。LINEやFacebookなどのSNS経由で現金を送金できるようになったり、指紋認証だけで店頭での支払いができるようになったり、といったことが実現しつつあり、フィンテックが普及していくことで、さらに便利な世の中が待っています。
フィンテックがさらに普及するためには安全に利用できるためのセキュリティーを整えていくことも重要となりますが、それは今後の技術革新にかかっているといえそうです。
後編ではフィンテックでとくに注目されている分野やサービスについてご紹介します。