トレード手法関連
MT4/MT5のインジケータは、大きく分類すると、トレンド系インジケータとオシレーター系インジケータの2種類に分けられます。
今回、この記事で紹介するのは、代表的なオシレーター系インジケータであるRSI(相対力指数)です。米国のトレーダーにとりわけ人気があるインジケータですが、日本のトレーダーにも活用されています。
このRSIは、1978年にJ・ウェルズ・ワイルダー氏が開発しました。ワイルダー氏は、RSIの他にもATR(Average True Range)、ADX(平均方向性指数)、Pivot(ピボットポイント)など、現代でも有効な数々のインジケータを開発した方です。
RSIに関する書籍もたくさん残されているのですが、世間一般で知られている内容とワイルダー氏のRSI分析の方法は、ずいぶん変わっていると感じます。
一般的には、RSIの数値30や70に注目して、逆張り指標として紹介されているケースが多いようです。
一般に知られているRSIの見方
RSIが30を下回った | 買いシグナルとして、エントリー |
RSIが70を上回った | 売りシグナルとして、エントリー |
しかし、実際のチャートでトレードしてみると、レンジ相場では役立ちそうですが、トレンド相場で大損になってしまいます。そのため、RSIは役に立たないとあきらめてしまうトレーダーもいます。実際に私もこの売買シグナルでトレードして、痛い目に遭ったことがあります。そのときは、単純に上記のエントリーシグナルしか覚えておらず、パニックになってしまっていました。
でも、本当のRSIの見方がそもそも違っているとしたら、どうでしょうか。RSIの計算式やワイルダー氏が遺した書籍を見ると、RSIの数値が意味していること、RSIがチャートの何に注目しているのかを理解できます。
今回は、オシレーター系指標で人気のRSIの本当の見方と分析方法をご紹介していきます。
知りたい情報 TOP3(ここを読めば解る)
この記事の目次
RSIの意味を計算式から読み解く【RSIの基本】
RSIの数値は何を意味するのか
RSIの正式名称は、「Relative Strength Index(相対力指数)」といいます。
RSIは、一定期間(n)のローソク足の変動幅の合計を算出し、上昇幅がどれくらいの割合かを調べることによって、相場がどの方向に傾いているのかを数値で示しています。
nが14であれば、過去14本のローソク足でこの計算を行い、上昇勢力と下降勢力のどちらが強いのかを数値化しているということですね。
RSIが注目しているのは、「上昇する力と下降する力はどちらが強いのか」という点です。上記の計算式をもとに、各数値が示していることをまとめてみます。
RSIの数値の見方
RSIの数値 | RSIの見方とトレーダーの行動 |
---|---|
70 | 変動幅の合計のうち、上昇幅が70%を占めており、上昇しようとする力が強くなっている状態。天井圏に近いと考え警戒する。 |
50 | 上昇圧力と下降圧力が同じで、方向感がない。レンジ相場になりやすい状態。 |
30 | 変動幅の合計のうち、下降幅が70%をしめており、下降しようとする力が強くなっている状態。底値圏に近いと考え、警戒する。 |
RSIの基本的な見方
オシレーターという言葉は「振り子」という意味があります。オシレーター系インジケータとしては、RSIの他にもストキャスティクス、MACDやモメンタムというインジケータが有名ですね。
例えば、上昇トレンドがどんどん勢いを増していくと、RSIの数値もどんどん大きくなっていきます。通常、安定的な上昇トレンド相場では3本上昇したら1本下落するというサイクルになると言われています。
これを基準として数値で示すと、約66%になります。つまり、70%を超えると、「トレンドが過熱しているのではないか」と考えられます。それで、70%を上回ると価格が反転するかしばらくすると大きな反発が発生する確率が高いというシグナルになるのです。下落の場合は30%を下回ると、価格の反転が近いと考えられます。
RSIを逆張りインジケータとして利用する根拠となる考え方ですね。この考え方自体は間違ってはいません。しかし、実際のトレードで使うのは難しいと思います。
ここで、RSIの30と70に着目して、チャートを見てみましょう。
上記の画像を見ると、確かにある部分では逆張りインジケータとして活用できそうですね。しかし、何回もダマシが発生している箇所がいくつかあります。それがトレンド相場です。トレンド相場が発生してしまうと、RSIは何回も逆張りシグナルを出してしまうという弱点があります。
私の考えでは、「70%や30%の数値を超えたから逆張り」というトレードはおすすめしません。そもそも、実践トレードでは使えない売買シグナルだと思います。
私自身も体験していますが、トレンドがいつ発生するか分からない以上、トレンド相場になってしまうと利益を上回る損失になる可能性が非常に高くなってしまいます。いわゆる、コツコツドカンです。
ここから、RSI=30やRSI=70以外のポイントで相場の転換を狙う方法を解説していきます。
RSIを活用して相場の転換を狙う【逆張り】
RSIをチャートとして考える
RSIは、「相場の転換点を狙う」インジケータとして人気があるのですが、単純にRSI=30やRSI=70の数値を売買シグナルとして利用するのは難しいと思います。
もちろん、機能することはあるのですが、トレンド相場になってしまった場合、利益の何倍も損失を出してしまう可能性が否めません。さらに、そこでナンピンをしてしまうと、大変なことになってしまうのは想像に難くありません。
損失が出ているポジションに加えて、さらに同じ方向にポジションを積み増すこと。上級トレーダーでも扱いが難しいポジション管理の1つ。トレーダーが資金を大幅に減少させてしまう原因の1つであるため、注意が必要。
では、RSIを逆張り指標としては使えないのか。ワイルダー氏は以下のように書いています。
70を超えるか、あるいは30を割った水準での失敗したスイングは、マーケットが反転する強いシグナルとなる。
「ワイルダーのテクニカル分析入門」より引用
このように、ワイルダー氏は、数値の30と70を見る以外にもトレンド転換を見るシグナルがあると書いています。
それが「失敗したスイング」という形です。
上昇トレンドからの転換で考えると、RSIが70を超えて一番天井をつけ(①)、一旦下落した後(②)、再度上昇したものの(③)、一番天井を超えられずに下落を始めた形(④)が「失敗したスイング」と呼ばれています。
「失敗したスイング」が形成されたかどうかは、RSIが一番天井をつけた後に一度下落した際の最低値(フェールポイント)を下抜けるかがポイントとなります。ワイルダー氏は、このフェールポイントを下抜けたポイントを「失敗したスイングポイント」と呼び、売りシグナルとみなしています。
具体的なチャートで見ていきましょう。
上記のチャートは、GOLDの4時間足チャートです。
こちらはRSIの「失敗したスイングポイント」が発生しており、これがトレンド転換を狙った売りシグナルとなります。価格チャートを見てみると、勢いよく上昇したあと、反落しています。その後、もみ合いとなったのですが、上昇トレンドに戻るのか、下落するのか判断が分かれるところです。
ここでRSIチャートを確認してみます。RSIが一番天井を付けた後に、RSIチャートも反落しています。このときは、一番天井の下に二番天井が形成されました。
このような形になったら、RSIが二番天井のレンジをブレイクアウトするかどうかを確認します。
RSIチャートで、一番天井の後の安値のことを「フェールポイント」と呼びます。このフェールポイントと同じRSIの数値をブレイクしたら、トレンド転換の可能性が高いと考えてエントリーしてみてください。
私も記事執筆の際に、実際に試してみたのですが、成果には正直驚きました。RSIでトレンド転換を見るのに活用できると思います。
ダイバージェンスが出ていたら確率アップ!
上記のRSIの「失敗したスイングポイント」に加えて、ダイバージェンスが発生していると、よりトレンド転換の確率が高いと判断できます。
価格とオシレーター系の指標が逆行する現象のこと。RSIやMACDのダイバージェンスが有名。
気を付けたいのは「ダイバージェンスが出たから逆張りで仕掛ける」という発想です。私はこの考え方も基本的におすすめしません。トレンド転換が近いと判断ができても、「いつ」転換するかは分かりません。1時間後かもしれませんし、数日を経てからかもしれません。
確証が少なすぎる状態で含み損を抱えてしまうと、どうしようもできなくなってしまいます。その間にトレンドが進んでしまったら...。大変ですね。
「ダイバージェンスが発生=そろそろトレンド転換する可能性がある」というぐらいの考えで、「保有しているポジションの決済シグナル」として扱うことをおすすめします。新規エントリーするには、リスクが高いと私は考えています。
RSIで考えてみます。RSIは「相場が、上昇傾向なのか下降傾向なのかを判断する」インジケータです。
RSIの数値が下がっているということは、徐々に上昇圧力が弱くなっているということですね。考えられる要因としては、機関投資家やヘッジファンドなどの大手投資家が決済をし始めているということがあります。そうなれば、新規買いエントリーをしているのは資金力が少ない個人投資家なので、いつか限界が来てしまいますね。
トレンド最終期になると、大陽線が出現し、その後、レンジ相場もしくは下降トレンドへ移行していくことが多くなります。
シグナルを覚えるだけでなく、意味を知ると、今までとイメージが変わってくると思います。
RSIを実践トレードで活用できるか、検証する【手法】
RSIが水平線やレンジ、トレンドラインをブレイクアウトするときに価格も勢いよくトレンド方向へ動きやすいという性質があります。RSIチャートでブレイクアウトをしたときに価格もブレイクアウトすると、その方向への変動幅が大きくなります。
この章では、「RSIブレイクアウト」にという考え方について解説します。
RSIブレイクアウトがないか確認しよう【準備編】
RSIをチャートとして考えると、とても面白いと思います。
例えば、RSIのヘッド&ショルダー、ダブルボトム、ペナントやレンジ、トレンドラインなどをRSIチャートに引いてみて下さい。
ちなみに、海外FX業者の採用するMT4/MT5では、チャートだけでなくオシレーター系インジケータの表示されるサブウィンドウにも水平線やトレンドラインを引くことができます。
ポンド円の1時間足チャートを分析してみます。
このチャートは、勢いよく下落していますね。もちろん、トレンド相場を全て獲得できれば良いのですが、なかなか難しいのが現実です。稼げるのは、短期間で勢いよく価格がトレンド方向に進むときです。
それを狙えるのが、「RSIブレイクアウト」という考え方です。
RSIブレイクアウトを実践トレードで活用する方法
- RSIチャートで反転シグナルを確認する
- レンジ相場になっているか確認し、水平線やトレンドラインがないか探す
- レンジやトレンドラインをブレイクしたら、トレンド方向にエントリーをする
RSIチャートで反転シグナルを確認する
RSIをチャートとして考え、トレンド転換のチャートパターンが出現していないか確認しましょう。反転シグナルとしては、ダブルトップ(ダブルボトム)やヘッドアンドショルダーがあります。
レンジ相場になっているか確認し、水平線やトレンドラインがないか探す
反転シグナルを確認した後、RSIがレンジ相場になっていないか確認しましょう。RSI=50を中心にしてレンジ相場になっている場合、トレンドが出ていても比較的緩やかになっています。そのため、一気に利益が出るということは期待できませんね。
狙うのは、エントリー直後から一気に利益が出るタイミングです。
レンジやトレンドラインをブレイクしたら、トレンド方向にエントリーをする
価格チャートではなく、RSIのチャートがレンジやトレンドラインをブレイクするタイミングを待ち、トレンド方向にエントリーしましょう。このポイントでエントリーする具体的な方法をこれから解説します。
RSIでエントリーするポイント【トリガー】
さきほどの画像を見てみると、RSIチャートがレンジからブレイクアウトしているタイミングで、価格変動に勢いが出ています。このトレンドでエントリーする最適なポイントです。
RSIがブレイクすると同時にRSI=30を割っていますね。考え方としては、「下降の勢いがさらに強くなり、トレンドが一気に進む可能性が高い」とみなします。
ですので、RSIチャートのブレイクアウトポイントは有効だと私は考えています。
RSIブレイクアウトのエントリーポイント
RSIチャートのレンジやトレンドラインをブレイクしたら、トレンド方向にエントリーをする
もちろん、全てのチャートに適用できるわけではありませんし、勝率も100%でもないので、総合的に判断する必要があります。
しかし、RSIをただの「買われすぎ、売られすぎ」シグナルとしてみるのは、もったいないと思います。
ぜひRSIをMT4/MT5に表示させて、実際に活用できるのか、検証してみてください。
RSIだけで新規エントリーするのは不安が残るという方もいると思います。RSIはオシレーター系インジケータなので、トレンド系インジケータとの組み合わせがおすすめです。RSIとボリンジャーバンド、RSIと移動平均線などが良いと思います。
また、通貨強弱を確認しておくと、どの通貨ペアでトレードできるか探すことができます。
RSIを使った決済するポイント【利益確定】
エントリーしたポジションをどこで決済するか迷うことがあると思います。トレンド方向にエントリーしている場合、「トレンドが弱まってきた段階での決済」がおすすめです。
例えば、上昇トレンドの場合、RSIが70を上回っていれば、トレンドが勢いづいている状態です。ローソク足が確定した段階で70を下回れば、上昇の勢いが弱くなっている証拠ですね。
下降トレンドも同じです。RSIが30を上回れば、下降の勢いが弱まっていることが理解できます。もちろん、総合的な判断になりますが、RSIには先行指標となりやすい性質があるので、決済するにはとても良いシグナルだと思います。
ストップロスをためらわずに行う
トレンドフォローであっても逆張りインジケータとしてRSIを活用するとしても、ストップロスをためらわずに行うことが重要です。
ここまで紹介した手法も完ぺきではありません。ストップロスは必ず行うようにしてください。
スポーツでは受け身が大切だとよく言われています。柔道などでも最初に習得するのは、「受け身」です。なぜかというと、受け身ができないと。身体を壊してしまう可能性があるからですね。
同じように、トレードでも最初に習得しなければならないのは「ストップロス(損切り)」です。ストップロスが全くできないトレーダーがどうなってしまうかは想像に難くないと思います。「上手な負け方=ルールに基づいたストップロス」ができてから勝ち方を学ぶと、どんどん実力が付いていきます。
トレーダーの第一歩は、「損切りができるようになる」ことです。「損切り」はトレーダーにとって、避けることはできません。つらいですが、感情をコントロールして、損切りができるようになりましょう。
(まとめ)RSIとトレンド系インジケータを活用しよう
ここまでRSIについて解説してきました。
RSIについてイメージが変わった部分があったと思います。RSIはただのオシレーターインジケータではありません。トレンドの転換のサインや価格が勢いよく動くタイミングでエントリーするのに活用できます。
RSIのグラフをチャートとして考えると、先行指標になりやすいので、チャートがどのように進むのかを予想しやすくなりますね。MT4/MT5で利用できるRSIは色や数値も変更できるので、RSI=30、70に加えて、RSI=50も表示可能です。
RSIについては、私のYouTube動画でも解説していますので、ぜひご覧ください。
RSIのフェールアウトポイントって?爆益を狙うシグナルを徹底解説します。
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編集部の
コメント
RSIの数値は、上昇する勢いと下降しようとする勢いのどちらが強いのかを示したものです。
RSIの数値の意味を理解すると、上昇か下降かどちらの方向に圧力がかかっているのかを判断できます。単純に逆張り指標として利用してしまうと、コツコツドカンとなってしまう可能性が高くなります。
このように考えると、RSIの見方が変わりますね。