トレード手法関連
パラボリックSARは、相場のトレンドやその転換を捉えるのに利用されるインジケータです。チャートの上または下のどちらかに表示されますが、この上下が入れ替わるときがトレンドの変わるタイミングとされ、トレンドの切り替えが明確に示されます。
パラボリックでうまくトレンドや転換をとらえられれば、大きな利益を上げることができます。しかし、ボリンジャーバンドなどと比較すると知名度の低いインジケータであり、上手に使わなければ利益を出すのは難しいともいわれています。
この記事では、パラボリックを使ったトレード方法や使い方などを、わかりやすく解説していきます。
知りたい情報 TOP3(ここを読めば解る)
この記事の目次
パラボリックSARを使ってみよう
パラボリックSARとは何か
パラボリックSARとは、RSIやPivot(ピボット)を考案したアメリカのJ・W・ワイルダー氏が開発、制作したトレンドフォロー型のインジケータです。パラボリックと呼ばれることもあります。
チャート上にパラボリックを表示すると、SARと呼ばれる点が放物線を描き続けることから、「放物線」の意味を持つ「パラボリック」と名付けられました。「SAR」はストップ&リバース(Stop And Reverse)の略で、このSARがチャートとぶつかると、トレンドが反転したことを示すサインとなります。
チャートとぶつかると、SARが移動平均線の反対側に移動するため、トレンドの転換が視覚的に把握できます。
パラボリックSARの見方
パラボリックSARの上下が入れ替わったときが「売買シグナル発生」となります。
買いシグナル | パラボリックが上から徐々に下がってきて、 チャートの下に移動したとき |
売りシグナル | パラボリックが下から徐々に上がってきて、 チャートの上に移動したとき |
パラボリックは、トレンドが始まった直後はゆっくりとチャートを追いかけ、トレンドの終わり近くでは急速にローソク足へと接近します。
視覚的にもわかりやすく、とてもシンプルなインジケータです。そのため、「ドテン注文に適したシステム」といわれています。
「買い」や「売り」のポジションを常に持っている状態で、保有しているポジションを決済すると、すぐにその反対のポジションを取ること。
パラボリックSARの強みと弱点
パラボリックSARの強みと弱点を実際のチャートで確認していきましょう。
パラボリックの強み
パラボリックの強みは、トレンド相場で有効に機能します。
パラボリックの位置で、「トレンドの転換点」や「売り買いのポイント」を明確に判断することや、sar(ドット)の間隔でトレンドの勢いを確認することができます。
強いトレンドが発生しているときは、上記のようにsar(ドット)の間隔が広くなり、トレンドが弱くなれば逆に間隔が狭くなります。トレンド相場が継続している限り、買いでも売りでも大きな利益を期待できるのです。
さらに、ポジションを保有していなくても、トレンドの転換点を見極めるのに活用できます。
パラボリックの弱み
レンジ相場の動きに弱いのが、パラボリックの弱点です。
パラボリックはトレンドフォロー型の指標ですので、レンジ相場のようにトレンドがないときには頻繁に売買シグナルが出る傾向があり、売買指標としては使えなくなってしまいます。
例えば、ローソク足が明らかに下降しているときに買いシグナルが出てしまったり、ローソク足が大きく伸びたりしているときに売りシグナルが出てしまうことがあります。
レンジ相場ではトレンドが発生する前にシグナルが反転することを繰り返しますので、パラボリックのシグナルどおりに途転売買を繰り返すと大きな損失となってしまいます。
パラボリックを活用する際には、トレンドが出ているかどうかを判別する必要があります。また、トレードに最適な時間を見極めることが必要です。
相場は「トレンド相場」と、「レンジ相場」に大きく2つに分けることができます。トレンド相場とは、ざっくり言うと方向感のある相場です。下位時間のチャートで見ると凸凹しているときもありますが、上位時間のチャートで見ると、高値も下値も順に切り上がって(切下がって)いきます。
一方、レンジ相場とは、一定の価格の範囲内でチャートが行ったり来たりして、上値と下値が共に抑えられているような相場を言います。
トレンド相場を狙ったトレード手法とレンジ相場を狙ったトレード手法は異なりますので、今の相場がどちらに当たるのか見極めることが必要です。日本人トレーダーに人気のドル円では、日中の70~80%ぐらいがレンジ相場だと言われています。
ここからは、パラボリックを実践トレードで活用する具体的な方法と4つのポイントについて解説をしていきます。
パラボリックSARを午後4時から使う理由
本記事では、欧州時間の冬時間(標準時間)で表記しています。夏時間(サマータイム)の期間は1時間早めて読んでください。
パラボリックSARは日本時間の午後4時から使うのがおすすめです。なぜおこの時間帯がおすすめなのか、理由を調べていきましょう。
理由1:欧州時間は取引量が多い
FX市場には特定の取引所が存在しないため、決まった取引時間がなく、基本的に週末を除いた24時間取引可能な点が大きな特徴ですが、取引時間帯による値動きの特性を理解することは重要です。
ここで、なぜ午後4時からのトレードがパラボリックを使ったトレードに適しているのか説明していきます。
日本時間の午後5時から翌日午前1時はロンドン時間と呼ばれ、世界最大の取引量を誇るロンドン市場が開き、欧州トレーダーが市場のメインプレイヤーとなります。世界最大と言われるロンドンのFX市場を中心に、主にユーロや英ポンドなどの欧州通貨ペアが活発に取引されます。
しかし、ドイツやスイス、アーリーロンドンと呼ばれるトレーダーたちはロンドン時間より1時間ほど早くトレードを開始して、相場の方向性を伺いながら大量の資金を投入し始めます。
日本では今のところありませんが、米国や欧州には夏時間や冬時間が設定されています。夏時間とは、日の出が早まる夏の時期に冬時間(基準となる時間)から1時間早めて生活する制度のことで、サマータイムやデイライトセービングタイムとも呼ばれています。
FXの取引時間も夏時間の間は1時間早まります。FXブローカーは、米国の夏時間にあたる3月第2日曜日~11月第1日曜日に合わせて夏時間を切り替える場合が多いです。
理由2:欧州時間はトレンドが出やすい
午後4時からの1~2時間は取引量が急に活発になり、どちらかというと強い方向感が表れる時間帯です。東京時間とは全く逆の値動きとなることもしばしばあります。
そして、その時間が過ぎた午後7時~午後9時は、比較的落ち着いたトレンド相場となり、チャートがゆっくり一方向に伸びていく緩やかな時間帯に入ります。
その後、ニューヨーク市場が開く午後10時くらいから、ロンドンフィキシングと呼ばれる午前1時に向けて、市場参加者が一気に増加してトレードが本格化していきます。ボラティリティが大きくなり、一方向に強く伸びてトレンドが形成される可能性が高くなります。
各市場の特徴
市場 | FX取引が活発な時間帯 | 各市場の特徴 |
---|---|---|
オセアニア | 午前6時~ 午前9時ごろ |
取引量が少なく、ほとんど動かないか極端な動きになる。 |
東京 | 午前9時~ 午後4時ごろ |
レンジ相場になりやすい。 |
ロンドン | 午後5時~ 午前1時ごろ |
サポートラインやレジスタンスラインを突破することもあり、トレンドが形成されやすい。 |
ニューヨーク | 午後9時~ 翌日午前3時ごろ |
前半はトレンドが発生しやすいが、米国がらみの経済指標の発表などで相場が大きく左右される。 |
パラボリックトレードの具体的手法
欧州通貨とオセアニア通貨の組み合わせがおすすめ
欧州通貨とオセアニア通貨ペアの組み合わせは、ゆっくりとトレンドが発生する傾向があります。また、パラボリックSARが機能しやすい通貨ペアでもあります。
例えば、
- ユーロ/豪ドル
- ユーロ/NZドル
- ポンド/豪ドル
- ポンド/NZドル
などです。
とりわけ、おすすめなのが「15分足」です。
下図のようなトレンド相場を狙っていきます。
インジケータを設定しよう
今回の手法では、MT4に標準搭載されているパラボリックSARを含めた3本のインジケータを使用します。
「マルチタイムフレーム分析」と呼ばれる分析方法ですが、今見ているチャートの時間足のパラボリックではなく、さらに上位時間のパラボリックを確認して使う方が効果的です。
パラボリックは、トレンド相場の場合には非常に効率的ですが、レンジ相場の場合には不安定なシグナルを出します。このようなことを避けるために、より長い時間枠で同じインジケータを使用すると安定します。
例えば、15分足のチャートでパラボリックがローソク足の下にある場合でも、上位足の1時間足ではパラボリックが上にある場合、「15分足では買いシグナルを示しているが、1時間足では売りシグナルを示している」ということになります。
これは、課長のAさんが「買いだ」といっているのに、さらに上司のB部長が「売りだ」と言っているようなもので、慎重にならざるを得ませんよね。
それで、15分足のチャートに2つの時間でパラボリックSARを表示してみましょう。
①通常のパラボリックSAR
一つ目は、MT4にプリインストールされているインジケータを使います。
パラボリックSARははMT4/MT5に標準搭載されているので、ダウンロードの必要はありません。ナビゲーター欄のインジケーター一覧の中から、「Parabolic SAR」をチャート上にドラッグ&ドロップするだけで表示させることができます。パラメーターの数値は変更せずにデフォルトのまま使用します。
②マルチタイムフレーム対応パラボリックSAR
二つ目は、別の時間足のパラボリックSARを表示することができるインジケータ「SN MTF SAR」です。
MT4/MT5を開発したメタクオーツ社が運営するコミュニティサイト、MQL5からダウンロードします。
SN MTF SAR
ここでは、本来なら1時間足で表示されるパラボリックSARを15分足のチャートで表示させます。下記のように、「tf」のパラメータで「1 Hour」を選択し、15分足チャートに貼りつけます。
そのほかのパラメータは、今回はそのままの設定です。
慣れてきましたら、選んだ通貨ペアによってStep(加速因数AF)を変化させてみましょう。
パラボリックSARの数値の変化が増減するスピードを設定するパラメータで、加速因数AFを増やすと増減のスピードが速くなり、逆に減らすとスピードが遅くなります。
15分足のチャートで1時間足のパラボリックSARを表示すると、下図のように連続したドットが表示されます。1時間足は、15分足4本分に対応するためです。
③移動平均線
MT4に標準搭載されているインジケータを使用します。移動平均線は、種別が「Exponential(EMA)」で、長期(期間48)と短期(期間16)の2本を表示させます。
移動平均線を加えることにより、よりトレンドを把握することができます。
指数平滑移動平均線といい、通常の移動平均線よりも直近の値動きを重視して算出される。
エントリーと決済のポイント
①パラボリックSAR、②1時間足パラボリックSAR、③移動平均線の3本のインジケータが表示されると、次のようなチャートになります。ここから、エントリーと決済のポイントを見ていきましょう。
エントリーポイント
エントリーの基本は、次の3つの条件が揃ったときです。
- 現時間足(15分)のパラボリックがトレンド方向にある
- 上位時間足(1時間)のパラボリックがトレンド方向にある
- 短期移動平均線(16)が長期移動平均線(48)をクロスしている
下記のチャートでは、買いで条件が揃いました。短期移動平均線が長期移動平均線を下から上にクロスするゴールデンクロスが発生した後、1時間足のパラボリックで見たトレンドが1日以上継続し、200pips以上上昇した強い上昇相場となりました。
三つの条件は、通常は一斉に揃うことはありません。条件1~3が揃う順番もその日によって違いますので、チャートを確認していってください。これらの条件が揃ったら、移動平均足とローソク足の関係も見ながらエントリーします。買いと売りの場合の具体的な条件は下記の通りです。
買い | 売り | |
---|---|---|
15分足SAR | ローソク足の下 | ローソク足の上 |
1時間足SAR | ローソク足の下 | ローソク足の上 |
移動平均線 | ゴールデンクロス | デッドクロス |
ローソク足 | 陽線が短期移動平均線の上 | 陰線が短期移動平均線の下 |
15分足SAR | |
買い | ローソク足の下 |
売り | ローソク足の上 |
1時間足SAR | |
買い | ローソク足の下 |
売り | ローソク足の上 |
移動平均線 | |
買い | ゴールデンクロス |
売り | デッドクロス |
ローソク足 | |
買い | 陽線が短期移動平均線の上 |
売り | 陰線が短期移動平均線の下 |
決済ポイント
決済ポイントは、エントリーポイント条件のどれかが外れたときです。
- 現時間のパラボリックがローソク足の逆側に点灯した
- 上位時間のパラボリックがローソク足の逆側に点灯している
- 短期移動平均線が長期移動平均線を逆にクロスした
①~③の二つ以上がそのままの場合は、トレンドが継続している可能性があります。いったんトレンドに乗ることができたら、あとは利益確定ポイントを待つだけです。
また、最初のうちは、トレンドが発生して動いた幅の30%~40%で満足しましょう。
後から見ると、「もったいないことをした!」「もっと取れた!」と思うことがありますが、これから動いていくチャートを追いかけて、底値や天井を見極めるのは相当な熟練が必要です。
長年、相場に接してきた玄人達でも、大きな動きの70%~80%取れれば上出来と言われています。
損切りの要領
「午後4時からのパラボリックトレード」は、損切りを徹底すれば高いリスクリワードレシオ(損益比率)が期待できます。
午後4時から午後7時ごろまでの流れと、それ以降の流れが変化してきましたら、損益にかかわらず決済してください。そして、トレンドを確認してから、再エントリーすることも検討できます。
トレンドが発生するかどうかは市場のセンチメントで決まりますから、事前に判断できません。また、日によって、トレンドが発生する時間が遅れる場合があります。
日本時間午後6時ごろから7時ごろにかけてトレンドが逆転する場合もありますし、午後9時以降になってからトレンドが決まる場合もあります。
次のようなときには、一度損切りして市場の様子を見ましょう。
- 10Pips以上の損が出たとき
- ローソク足が短期移動平均線と交わったとき
- 決済ポイントの条件になったとき
- 午後9時までに利益が出ていないとき
「午後4時からのパラボリックトレード」3つのコツ
コツその1:ロンドン市場が落ち着くまで待つ
午後3時ごろからボラティリティが高い場合は、少し様子を見た方がよいでしょう。「午後4時からのパラボリックトレード」は、ボラティリティが比較的安定しているときによい成績を残すことができます。
また、ローソク足が移動平均線に絡みつくように動いている場合や、長いローソク足が出ているときは、様子を見ましょう。
ローソク足のヒゲ(ピンバー)が長かったり、包み線やはらみ線が交互に出ていたりする場合は大きなトレンドが出る前兆の場合が多いですが、上下どちらに傾くかはトレンドが出てからしか分かりませんので、慣れるまでは見送った方が無難です。
コツその2:エントリーチャンスは3回ある
午後4時からチャートを確認してもエントリーするチャンスがなかった場合、午後7時と午後9時、午前0時(24時)からトレンドが変わる可能性もあり、エントリーするチャンスがあるかもしれません。このチャートでは、午後7時にトレンドが急変しています。
午前零時(24時)以降は、ボラティリティが低い場合には、なだらかなトレンドが形成される場合があります。
日本時間で深夜1時から3時ごろまで続くこともあります。この時間帯ですと、トレンドが進むにつれて決済注文のレートを動かしていくトレーリングストップ注文を使った方が便利ですね。
コツその3:通貨ごとの特徴を理解しよう
例えば、EUR/AUD(ユーロ豪ドル)の場合、最近は月曜日に安定的なトレンドが発生しやすいようです。また、金曜日は遅い時間帯になってからトレンドが発生することもあります。
重要な指標が発表される時間帯や回数なども要因となりますので、XMTrading(エックス エムトレーディング)の経済指標カレンダーなどで事前に確認しておきましょう。
いつも同じ動きをするわけではありませんが、トレードしようとする通貨ペアの特徴や強弱をチャートから読み取っていきましょう。
(まとめ)パラボリックSARの使い方は無限大
この記事では、パラボリックSARの特徴やその使い方、また、パラボリック単体だけでなく、移動平均線も同時に活用することで勝率を上げる方法を紹介しました。
本記事のようなトレンドフォロー型のトレードは、スキャルピングと比較して取引回数が少ないというメリットがありますが、トレードを有利に進めるためには、上手にトレンドの流れに乗っていくことが大切です。
組み合わせるインジケータの種類を変えたり、場合によっては逆張りに使ってみるなど、パラボリックの使い方は無限大にありますので、ぜひ、自分に合ったトレード方法を見つけて、実践トレードで試してみてください。