海外FX初心者
海外FXで高収益を上げている方や今後の取引拡大を考えている方で、法人化を検討されている方は多いのではないでしょうか。
海外FX取引は個人口座の場合雑所得となり税務面で不利になります。しかし、法人口座を活用することで、税率の低減や損失の繰越など多くのメリットを享受することが可能です。
この記事では、海外FX取引の法人化を検討する際の具体的な基準や、法人口座活用のメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
この記事の目次
海外FXでは法人口座は利用可能なブローカーが多い
多くの海外FX業者では法人口座を提供しており、開設することで法人としてFX取引が可能です。継続的な収益を上げているトレーダーにとって法人化は、税制面での大きなメリットとなります。
しかし、法人化には設立費用や運営コストなど考慮すべき要素も多いため、慎重な判断が必要です。まずは、法人口座の取引条件や、法人化を検討する適切なタイミングについて詳しく見ていきましょう。
法人口座とは、法人名義でのみ開設することができる口座です。FX取引を法人として行うために必要であり、個人口座では法人としての取引や税制上のメリットを受けることができません。
海外FXの法人口座はレバレッジ等の取引条件は同じ
海外FXの法人口座は、取引条件面では通常の取引口座と同じです。そのため、スプレッドやレバレッジなどで法人口座に優位性があるということはありません。
税金のメリットの活用を主目的として、法人口座の開設を検討するのが一般的です。年間で高収益を上げているトレーダーの場合、法人化により大幅な税負担の軽減ができます。
具体的には、経費計上の範囲拡大や損失の繰越制度などを受けることが可能です。
国内FXでは法人化によってレバレッジを高めることができます。個人口座は最大レバレッジが25倍に制限されていますが、法人口座では金融庁が発表する為替リスク想定比率に基づき、多くの通貨ペアで40~70倍のレバレッジで取引が可能となっています。
海外FX法人化のタイミングは?
海外FXで法人口座を検討する具体的な目安は、年間利益が900万円以上かつその水準を安定的に維持できる見通しがある場合です。
この基準となる理由は税率構造にあります。個人事業主の場合、所得が900万円を超えると所得税率が33%に上昇する一方で法人の場合、年間800万円以下の所得に対する実効税率(法人税・住民税・事業税の合計)は約23%です。そのため、900万円が損益分岐点となり、この税率差に加えて様々な節税効果が期待できます。
ただし、税理士への報酬や決算関連費用など、法人化には追加コストも発生します。また、赤字でも法人税の支払いが必要です。単に年間利益が900万円を超えるだけでなく、これらの固定費を考慮しても余力のある収益水準を継続的に維持できる見通しが重要となります。
海外FXの個人口座と法人口座の違い
個人口座 | 法人口座 | |
設立費用(※1) | なし | 10万円~30万円程度 |
税理士顧問料(※2) | 個人でも対応可能 | 決算内容が複雑で専門家のアドバイスが必要 |
所得の確定方法(※3) | 確定申告 | 決算 |
赤字の場合 |
|
|
損失繰越 | 不可 | 10年間 |
未決済ポジションの扱い (スワップポイントも含む) |
所得に含めない | 決算書に記載する |
経費の範囲 | 狭い | 広い |
損益通算 (損益の相殺)(※4) |
できない | できる |
事務所やパソコン | 事業共用分のみ | 法人名義での購入であれば、全額計上可能 |
設立費用(※1) | |
個人口座 | なし |
法人口座 | 10万円~30万円程度 |
税理士顧問料(※2) | |
個人口座 | 個人でも対応可能 |
法人口座 | 決算内容が複雑で専門家のアドバイスが必要 |
所得の確定方法(※3) | |
個人口座 | 確定申告 |
法人口座 | 決算 |
赤字の場合 | |
個人口座 |
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法人口座 |
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損失繰越 | |
個人口座 | 不可 |
法人口座 | 10年間 |
未決済ポジションの扱い (スワップポイントも含む) |
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個人口座 | 所得に含めない |
法人口座 | 決算書に記載する |
経費の範囲 | |
個人口座 | 狭い |
法人口座 | 広い |
損益通算 (損益の相殺)(※4) | |
個人口座 | できない |
法人口座 | できる |
事務所やパソコン | |
個人口座 | 事業共用分のみ |
法人口座 | 法人名義での購入であれば、全額計上可能 |
- 海外FXの法人口座開設は無料だが、法人登記などにコストが発生する
- 税務処理が複雑なので、税理士に依頼する場合が多い
- 決算書は確定申告と異なり、複雑
- 法人は事業所得として、他の収入と合算できる
サラリーマンは海外FX取引の法人化は可能?
会社員の方がよく抱く疑問として、サラリーマンでも海外FX取引の法人化が可能かというものがあります。結論から言えば、サラリーマンでもFX取引を法人化することは可能です。
ただし、毎月の経理処理や確定申告の手続きなどの定期的な実務が必要になります。また、サラリーマンとしての給与所得に加えて法人の所得も発生する点や、役員報酬を設定する場合は社会保険料の二重払いなども考慮しなければなりません。
本業の就業規則で副業や役員兼任が禁止されていないことが大前提となります。多くの企業で副業が認められるようになってきていますが、必ず勤務先の規定を確認し、必要に応じて届出を行うことが重要です。
海外FX法人口座のメリットを解説
海外FX取引の法人化における最大のメリットは、効果的な税務戦略の構築にあります。具体的には、低い税率の適用に加え、損失の繰越制度の活用や経費計上の範囲拡大など、様々な面で利益を確保しやすい仕組みが整っています。
海外FX法人口座は税率のメリットがある
海外FXで高収益を上げる場合において、海外FXの法人口座は個人口座よりも低い税率となるのがメリットです。
個人口座の場合、利益は雑所得として扱われ、5~45%の累進課税が適用されます。年間所得が900万円を超えると税率は40%となり、さらに所得が増えるにつれて税率も上昇していきます。
一方、法人口座の場合、利益に対する実効税率は年間800万円までが23%、800万円を超える部分で約33%です。
実効税率とは、法人が実際に負担する税金の割合です。法人税、法人住民税、法人事業税を合計し、実質的な負担率を示します。
特に高い収益の場合は法人化で大きな節税効果が期待できます。
個人口座・法人口座の税制の違い
口座種別 | 適用される税制 | 税率 |
国内FX個人口座 | 申告分離課税 | 一律20%(住民税込み) |
海外FX個人口座 | 総合課税 | 所得金額に応じて5~45%+住民税10% |
海外FX・国内FX法人口座 | 法人税 | 15~23.2%+法人事業税、法人住民税等 |
国内FX個人口座 | |
適用される税制 | 申告分離課税 |
税率 | 一律20% (住民税込み) |
海外FX個人口座 | |
適用される税制 | 総合課税 |
税率 | 所得金額に応じて 5~45%+住民税10% |
海外FX・国内FX法人口座 | |
適用される税制 | 法人税 |
税率 | 15~23.2% +法人事業税、法人住民税等 |
役員報酬の調整で節税対策になる
法人税率(15~23.2%)は個人所得税率(5~45%)より低いため、役員報酬を抑えて会社に資金を残す方法が効果的です。余剰資金を会社に内部留保することで、低い法人税率に加えて、運用によってさらなる資産形成が可能となります。また、家族を役員として登用することで所得を分散させ、税負担を抑えることができます
役員報酬の金額に注意
役員報酬は実際の業務内容に見合った妥当な金額に設定する必要があります。
海外FX法人化によって経費範囲が拡大
海外FXの法人口座を作成して法人化することで、認められる経費が個人事業主と比べてより広範囲になり、節税効果がさらに高まります。
個人事業主の場合、事業との関連性が明確でない支出は経費として認められにくい傾向にありますが、法人では事業目的に基づく支出であれば、より柔軟な経費計上が可能となります。具体的な経費例は以下の通りです。
個人口座と法人口座の経費範囲の違い
経費種別 | 個人口座 | 法人口座 |
書籍代 | ||
セミナー代 | ||
役員報酬 | ||
生命保険などの各種保険 | ||
パソコン代などの ランニングコスト |
FXで使う割合分のみを計上 |
法人名義で購入すれば 原則全額計上できる |
退職金 | (※) |
書籍代 | |
個人口座 | |
法人口座 | |
セミナー代 | |
個人口座 | |
法人口座 | |
役員報酬 | |
個人口座 | |
法人口座 | |
生命保険などの各種保険 | |
個人口座 | |
法人口座 | |
パソコン代などの ランニングコスト | |
個人口座 | FXで使う割合分のみを計上 |
法人口座 | 法人名義で購入すれば原則全額計上できる |
退職金 | |
個人口座 | |
法人口座 | (※) |
退職所得控除等の控除制度の対象となり、節税につながる
役員報酬や生命保険などの各種保険料、事務所経費など個人口座では認められない多様な経費計上が可能になるのがポイントです。
また、事業用機器やその運用コストについても、個人の場合はFX取引での使用割合のみが経費となりますが、法人名義での購入では原則として全額を経費計上できます。さらに、役員退職金も、退職所得控除などの税制優遇措置の対象となります。
海外FX法人口座は最大10年の損益繰越しが認められている
海外FXの法人口座を活用する重要なメリットとして、損失の繰越制度があります。法人として事業所得での申告を行う場合、FX取引による損失を最大10年間繰り越すことができます。
個人の場合、海外FX取引は「雑所得」として扱われるため、損失繰越の制度を利用することができません。一方、法人では将来の収益が出た年度の課税所得を過去の損失で減らすことで手元に残る資金を確保しやすくなり、長期的な事業運営がしやすくなります。
さらに、海外FX取引を含むすべての事業活動からの損益を通算できる点もメリットです。
海外FX法人化で社会保険への加入できる
海外FXで法人化することで、健康保険や厚生年金といった社会保険に加入することができることもメリットです。厚生年金は国民年金と比較して受給額が大きく、将来の収入源となります。
さらに、会社負担の保険料は全額損金算入できるため、給与設計と社会保険料のバランスを最適化することで実質的なコスト削減にもつながります。
法人化により、家族や従業員を正社員として雇用することで、事業主だけでなく従業員全員が社会保険制度のメリットを享受できます。
海外FX法人口座のデメリットを解説
海外FX取引の法人化は個人事業主にとって、税金対策や資産運用の多様化を図る上で、非常に有効な手段です。しかし、法人口座の開設にはデメリットも存在するため、総合して検討する必要があります。
海外FXを法人化すると赤字でも税金が発生する
法人では、収益の有無にかかわらず年1回の決算期に税金の納付が必要です。赤字決算であっても法人住民税の均等割として最低でも7万円を支払わなければなりません。
これは個人事業主の場合、赤字なら税金がゼロとなるため大きな違いです。また、役員報酬を支払う場合は、法人側の社会保険料負担に加え、個人側での給与所得としての課税も発生します。
法人の設立手続きの煩雑さと費用負担
海外FXの法人化は、設立時のコストと手間が大きな負担となります。まず、最初に以下の費用が掛かります。
法人設立にかかる初期費用
- 合同会社:6万円以上
- 株式会社:20万円以上
- 専門家への依頼費用:追加で10~20万円
さらに設立後も税理士費用や決算書作成費用など継続的な経費が発生します。また、定款作成から登記申請まで、複雑な手続きと厳格な規則への対応が求められ、多くの場合専門家のサポートが必要です。
安定した収益が見込めない場合、これらの固定費がコストとして重くのしかかることもあるため注意しましょう。
手続きの責任が大きい
法人設立後は定期的な報告や申告が求められます。毎年の決算報告や税務申告、役員変更時の登記変更など、継続的な手続きは代表者の責任で行う必要があります。また、手続きミスは法人・代表者への罰則対象となる可能性があります。
海外FX法人口座は含み益にも課税される
法人の場合、期末時点で保有しているポジションの未実現利益(含み益)に対して課税対象となります。これは「時価主義」と呼ばれる会計原則に基づくもので、実際に決済していなくてもその時点での利益となるためです。
また、これによって決算期末における取引判断や、資金繰りに影響を与える可能性が考えられます。
海外FXを法人化すると資金利用に制限がかかる
法人での取引で得た利益はすべて会社の資産となります。そのため、たとえ代表者であっても自由に引き出して使用することはできません。
資金を個人で利用する場合は、役員報酬や配当金として正規の手続きが必要となり、それぞれ課税対象となります。会社の資金を私的に流用した場合は横領とみなされ、刑事罰の対象となる可能性もあります。
海外FXの法人口座を利用する手順は?
海外FXの法人取引を始めるには、法人設立から口座開設まで段階的な準備が必要です。具体的には、法人設立・登記、国内銀行での法人口座開設、海外FX業者への口座開設申請という流れとなります。
法人設立の準備と登記
法人設立の手順は大きく5つのステップに分かれています。まず事業形態を選択し、その後必要な書類作成や各種申請へと進んでいきます。以下が具体的な手順となります。
法人設立の流れ
- 事業形態の選択(株式会社または合同会社)
- 定款作成(会社の基本規則を定める書類)
- 公証役場での定款認証
- 法人印鑑の作成
- 法務局での登記申請(訪問、郵送、オンライン)
法務局から不備等の連絡がなければ、法人設立が完了となります。
設立後も税務署や年金事務所、銀行口座開設など、様々な手続きが必要となります。専門家に依頼することで、これらの手続きを効率的に進めることができます。
海外FXの法人口座の申請
海外FX業者への口座開設申請では、ブローカーによって手順が異なります。口座開設時に法人を選択できる場合もあれば、法人口座を申請するためにカスタマーサポートの連絡が必要な場合もあり様々です。
また、提出する書類も異なりますが、主に以下が必要です。
海外FXの法人口座開設に必要になることが多い書類
- 法人登記簿謄本(英訳必要な場合あり)
- 代表者パスポート
- 法人の財務諸表
- 実質的支配者に関する書類
- 取引目的証明書類
書類提出後は、真偽確認とコンプライアンス審査が行われ、必要に応じて追加書類の提出が求められます。すべての審査をクリアすることで法人口座の開設が完了します。
海外FX法人口座のおすすめブローカー
法人口座の選択では、多額の資金を扱う法人取引では、安全性を最優先に考える必要があります。具体的には、信頼性、補償体制が重要な判断基準となります。そのほか、充実した日本語サポートがあるのも望ましい要素です。
法人口座を提供しているおすすめの海外FXブローカーをご紹介します。
TianFX
TitanFX(タイタンFX)はバヌアツ共和国に拠点を置き、信頼性の高い英領バージン諸島金融サービス委員会(FSC)の厳格な規制を受けています。トレーダーからの評判が高く、出金などのトラブルも報告されていません。Titan FXでは口座開設時に法人口座を選択できます。
Titan FXはトレーダーとブローカー間の紛争解決サービスである「Financial Commission」に加入しており、2万ユーロまでの補償を受けることができるため安全性はかなり高いです。取引条件面では狭いスプレッドと圧倒的な約定力、透明性の高い取引が魅力です。さらに、年中無休の日本語サポートにも対応しているため安心して利用できます。
ThreeTrader
ThreeTrader(スリートレーダー)は、法人口座が利用できる海外FX業者の中で最狭クラスのスプレッドを提供するブローカーです。取引コストを最重要視するトレーダーにとって最高レベルの取引環境を提供しています。ThreeTraderの個人口座の開設後、サポートに必要書類を送付を提出することで法人口座を開設可能です。
ThreeTraderも「Financial Commission」に加入しており、最大2万ユーロまでの補償が受けられます。また、日本人スタッフが在籍するサポートセンターも対応の評判が非常に高いです。
XS.com
XS.com(エックスエス)は、2010年に設立されたB2Bブローカー「XSグループ」を母体とする海外FX業者です。信頼性の高いオーストラリア証券投資委員会(ASIC)の認可を受けており、500万ドルまでの補償が受けられる保険契約を締結しています。
XS.comで法人口座を開設するためにはまず個人口座を開設し、法人アカウントを開設に必要な書類を提出します。
取引条件面では、元Exness(エクスネス)のスタッフが立ち上げトレーダーのニーズに対応した非常にハイレベルな取引環境で極狭スプレッドと高約定力を実現しています。XS.comもサポートが充実しており、ライブチャットが開いている時間帯で発生した不明点は迅速にサポートを受け解決することが可能です。
海外FX法人口座で収益を最大化
海外FX取引を法人化することで、様々な税制上の優遇を受けることができ、資産形成のスピードを高めることができます。年間赤字が出てしまった場合でも損益通算できるようになり、個人口座での海外FX取引にはない大きなメリットです。
具体的な基準としては、年間収益が900万円を超えた時が、法人化を検討するタイミングといえます。ただし、税制の知識を身につける必要性や法人設立の手続きの煩雑さ、継続的な経費といったデメリットもあるため事前の綿密な検討は必須です。
ご自身の状況をしっかりと見極めた上でメリットが多いと判断できる場合は、税理士などの専門家と相談しながら海外FX取引の法人化を進めていくのがよいでしょう。