有事のドル買い
2018.07.10
有事のドル買いとは、戦争や紛争などが起こった場合、安全資産という意味合いからドルが買われることをいいます。ドルが基軸通貨であることから以前はこのような現象がたびたび見られました。
米国債も安全資産の代表格であり、有事の際には米国債やドルが買われ、有事のドル買いと同様な経験則として有事のスイス買いがあげられます。
戦争や武力衝突以外にも有事に経済危機を含めるのならば、2008年の世界的な未曾有の金融収縮も有事のドル買いだったといえます。
当時、ドル安の流れがあった中、金融収縮が極まったことでドルに資金が逆流しました。これはドルがファンディング通貨としての意味合いを強めていたためで、ドルキャリー取引の巻き戻しといえます。このときは円キャリー取引も急速に縮小しました。
広い意味で有事を捉えるなら、以前のような有事のドル買いは引き続き残っています。
しかしながら、冷戦時代のような米ドルのみに頼り切った頃の世界経済と、今日とでは構造が大きく異なります。最近では、有事のドル買いが以前のように敏感に反応せず、当該有事が米国に対してどのような影響があるのかを見極めようとする動きがあります。
つまり、その有事が米国経済にとって有利なのか不利なのかによって、ドルの相場は反応するようになってきています。
状況次第では「有事のドル買い」ではなく「有事のドル売り」の可能性も否定できません。すなわち、以前のような「有事」イコール「ドル買い」とする単純な構造ではなくなってきているのです。
読み方
ユウジノドルガイ・ゆうじのどるがい