ドルペッグ
2018.07.02
ドルペッグとは、自国・地域の通貨と米ドルの為替レートを一定割合で保つようにすることであり、すなわち自国・地域の通貨レートを米ドルに連動させる仕組みをいいます。現在、一部の中東産油国の通貨などが採用しています。例えば、中国の人民元と連動させれば「人民元ペッグ」となります。
一般に、ペッグ制とは固定相場制度の一つで、経済基盤の弱い国や不安定な国が自国の通貨レートを経済的に関係の深い大国の通貨レートと連動させる仕組みであります。
ちなみに固定相場制にはペッグ制のほかに複数通貨の平均値との連動を図る通貨バスケット制、国内に流通する自国通貨に見合っただけのドルを中央銀行が保有するカレンシーボード制などもあります。
そもそも、ペッグ制とは発展途上国や経済的に不安定な国が、自国通貨の安定をはかるために導入するものです。
基軸通貨である米ドルと連動させることで自国通貨の安定を図り、不安定な自国通貨の為替変動リスクを防ぎ(抑え)、対米貿易の採算を安定させることができるのです。安定した基軸通貨の為替レートと連動させることで、自国通貨が乱高下しないことをアピールできます。
しかし、その一方で米国等の相手国の金利政策と連動しているため、自国の通貨政策に対する裁量(金利の上げ下げなど独自の金融政策)の余地が小さく、また自国の経済実態と乖離して米ドル高が進行した場合には自国の通貨政策と経済運営に多大な影響を及ぼすリスクや、独自の政策をとりにくいというデメリットがあります。そのため、自国の経済実態とマッチしない状況に陥る可能性も低くありません。
日本では1949年以降ドルペック制が採用され、1ドル=360円で固定されていました。しかし、1970年代に入り、ニクソン米大統領が、ドルと金の交換を停止すると発表したことがきっかけとなって、いわゆる「ニクソン・ショック」が起こり、日本の固定相場制は廃止に至ります。
また、2015年のスイスフラン・ショックは、スイスが突然ドルペッグを廃止したによって起こりました。スイスフランは大暴落し、市場は大混乱に陥ったのです。
ペッグ制を採用している通貨は、常にこうしたリスクを抱えているため、ペッグ制の通貨を取り扱わない証券会社も少なくありません。香港ドルもその1つであり、今後香港ドルがドルペッグを廃止すると、大暴落することも予想されます。それを逆手にとって売り建てすれば、莫大な利益につながる可能性もありますが、リスクも小さくありません。
読み方
ドルペッグ・どるぺっぐ