FXの発注方式の違い。「ECN方式」「STP方式」ってなに?
FXに関する基礎知識
FXブローカーの運営方法には、日本国内のFXブローカーのほとんどが採用している「ディーリングデスク(DD)方式」と、海外FXブローカーの多くが採用している「ノーディーリングデスク(NDD)方式」とが存在します。
トレーダーにとって有利なのはノーディーリングデスク方式のほうです。しかしノーディーリングデスク方式を採用していても、その中には「ECN方式」と「STP方式」という2つの発注方式が存在します。そこでここでは、この2つの発注方式の違いと、方式ごとのメリット、デメリットを説明していきます。
注文が自動的にマッチングされる「ECN方式」
ECN方式とは、「Electronic Communications Network」の頭文字をとって名付けられた名称です。直訳すると「電子通信ネットワーク」という意味になりますが、アメリカには金融商品を電子商取引できる私設取引システムがあり、その取引所のことを「ECN」と呼んでいます。
いわば、「ECNという私設取引所に直結して為替を取引する発注方法のこと」をECN方式と呼んでいるわけです。
このECN方式では、個人トレーダーだけでなく、ファンドやFXブローカー、証券会社、銀行、その他の「Liquidity Providers(リクイディティプロバイダー)」などの売買注文が絶えずマッチングされ、売買が成立していきます。
また、参加者の注文はそれぞれ板情報として追加されます。その板情報を参照することで、「いかほどの価格で、いかほどの注文が出ているのか」について参照することができます。
なお、ECN方式のマッチングはオークション形式になっています。売買の注文が合致すれば、注文は即座にコンピューターによってマッチングされ約定されるのです。
オークションの特性として、ご自身の売り注文に対応する反対注文(買い注文)があった場合は即座にマッチングされますが、逆にご自身の注文に対して反対注文の割合総数が少ない場合はマッチングできず、決済しない可能性もあります。
しかしECN方式では、大口のカバー取引先が参加しているために膨大となる売買注文の中からカバー先を自動でつけているために、約定力は非常に高いものがあります。また、必ずしもスプレッドは最小とはいかずスリッページが発生することはあるものの、リクオートは発生しません。そのため、安定して取引することができるのがECN方式のメリットとなっています。
取引の透明性もECN方式の魅力のひとつ
ECN方式を採用しているFXブローカーは取引量に応じて手数料を徴収します。生スプレッドに手数料を上乗せするようなことはしないので、その取引の透明性もECN方式の魅力となっています。
ただし、十分な約定力を得るためには、一定以上の流動性(取引量)が確保されていなければならないというデメリットもあります。そのため、取引が薄い相場のときや通貨ペアの場合は約定されない可能性もあります。
また、ECN方式を採用しているFXブローカーでは、初回入金額が高めに設定されていることが多くあります。そのため、手軽にFX取引をしたいと考えている人にとっては、そこをデメリットに感じてしまうかもしれません。
FXブローカーがいったん注文を呑む「STP方式」
STP方式とは「Straight Through Processing」の頭文字をとって名付けられた発注方式です。意訳すれば「注文が直接市場に流れる」ということになります。このSTP方式を採用しているFXブローカーの場合、カバー先の金融機関のレートを参照して、レートにスプレッドを上乗せしてトレーダーへ提示します。
このようにSTP方式では、カバー先からの提示レートと、トレーダーへの提示レートの差がFXブローカーの利益となります。そのためカバー先が多いほど有利なレート配信が可能となります。
STP方式のFXブローカーの場合、トレーダーから注文をもらうと、それをいったん自らが呑み(決済し)ます。その後、ブローカーは瞬時にカバー先に注文を出しますが、レート次第ではその瞬間でFXブローカーに損が発生する可能性もあります。しかし、ブローカー側は損をしたくないので、リクオートが発生することもあります。
STP方式にはInstant Executionと
Market Executionの二つの注文方法が存在
ただしこのようなことが起こるのは、「Instant Execution(インスタントエクスキューション)」で取引を行っているFXブローカーに限ります。
ここで、Instant Executionについて説明しましょう。
Instant Executionとは、「直ちに実行する」ということであり、FXの世界では「即時注文決済」を意味します。トレーダーが注文したらFXブローカーは直ちにそれを呑み(決済し)ますが、実際の取引はこの時点では発生していません。その後、ほぼ同時にカバー先の金融機関に注文を流すので「呑み」が発生している状況は一瞬です。
Instant Executionには対となる用語があります。それは、「Market Execution(マーケットエクスキューション)」です。
Market Executionの意味あいとしては、Instant Executionの反対のことをしているということです。いわば、FXブローカーがトレーダーの注文を呑むのではなく、直接、カバー先の金融機関に注文を出す注文方法のことです。カバー先に対して直接注文することでリクオートは 発生しませんが、注文が即時に決済されない場合には、スリッページが起こりうることもあります。
なお、Market Executionを提供しているFXブローカーの中には、トレーダーからの注文を金融機関の市場価格で成立させるための電子的なシステム、「DMA(Direct Market Access)」を提供しているところもあります。
このDMAを提供していれば、マーケットと直接つながっていることで透明性が高く、その上、遅延がほとんどない取引環境が利用できるのです。
しかしマーケットの特性上、固定スプレッドはあり得ません。そのために、固定スプレッドをうたっているFXブローカーであればDMAは提供していないと言えます。
それぞれの注文方法には一長一短が存在
STP方式を採用している海外FXブローカーには、決済方法としてInstant Executionを採用しているブローカーが多くなっています。ただし、「Instant ExecutionよりもMarket Executionのほうが優れている」ということではなく、それぞれ一長一短があると言えます。
例えば、Instant Executionでは数千円単位、数万円単位の小口取引からでも可能なため、FX初心者でも楽しめるようになっています。
ただし、100万通貨単位の大口の取引を行う場合、確実に注文が決済されることが必要となりますので、Market Executionを採用しているほうが良いでしょう。
また、Market Executionではスプレッドと取引手数料の合計コストが下がるため、大口取引になればなるほどメリットが大きくなります。
ECN方式とSTP方式。
自らのトレードに適した方法を選ぼう
ここまでECN方式とSTP方式との違いを述べてきましたが、海外FXブローカーの場合は、STP方式の口座とECN方式の口座を両方提供しているところが多くあります。
透明性から言えばECN方式のほうが高いですが、手数料とスプレッドの関係からSTP方式が取引に有利になる場合もあります。自らのトレード方法やトレード額などを考慮しながら適した方式を選びましょう。