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鉱工業生産指数は、国の鉱業・製造業などの生産高を表す経済指標のことです。
鉱工業は景気の状況に敏感であり、その国の景気を判断するのに役立ちます。そのため、鉱工業生産指数はFXの相場分析の参考としても活用できます。
この記事では鉱工業生産指数の内容や、FXでの活用方法、注意点などについて詳しく解説します。
鉱工業生産指数とは鉱業・製造業などの生産高を表した指標
鉱工業生産指数とは、各国の鉱業・製造業などにおける生産高を表した指標で、鉱工業の活動状況を総合的に表す「鉱工業指数」のうちの1つです。鉱工業生産指数は各国で発表されており、その国の経済状況を知る上で欠かせない経済指標のひとつです。
日本での国内総生産(GDP)において、鉱工業が占める割合は多く、為替相場に影響を与えやすいです。そのため、日本円を含む通貨ペアを取引する際には、日本の鉱工業生産指数はチャートの動向を測る指標として重視されることもあります。
また、GDPの発表が3か月ごとであるのに対し、鉱工業生産指数は毎月発表され、経済指標のなかでも速報性があることから、近い将来の価格の動向を予測するのにも活用しやすいという特徴があります。
鉱工業生産指数を発表する機関
鉱工業生産指数は、世界各国さまざまな機関で発表されています。例えば、アメリカの場合は「米国連邦準備制度理事会(FRB)」により発表されます。日本の鉱工業生産指数は「経済産業省」により発表されます。
また、同じ鉱工業生産指数という名称であっても、調査規模や発表時期などは各国で異なります。
鉱工業生産指数の調査内容
アメリカの鉱工業生産指数は、以下の業種を含みます。
アメリカの鉱工業生産指数の業種の例
- 鉱業
- 公益事業
- 製造業・耐久財(機械、輸送機器、電気機械)
- 製造業・非耐久財(食品、化学)
基準年(現在は2012年)と比較した生産量と生産能力のレベルを測定し、毎月中旬頃に発表しています。絶対的な生産高などを表しているのではなく、あくまで2012 年に対する生産のパーセンテージの変化を表します。
日本の鉱工業生産指数は、以下の業種を含みます。
日本の鉱工業指数の業種の例
- 鉄工・非鉄金属工業
- 金属製品工業
- 電子部品デバイス工業
- 電子通信機械工業
- 化学工業
- パルプ・紙加工品工業
日本ではこれらの生産能力指数などが毎月統計され、基準年(現在は2015年)を100.0とした比率の形で、月末に経済産業省から発表されます。
鉱工業生産指数をFXの分析に活用する方法
鉱工業生産指数を、FXのチャート分析に活用する方法を解説します。鉱工業生産指数はその国によって影響力の高さは異なります。各国の鉱工業生産指数を確認し、取引をしている通貨ペアの分析に役立てましょう。
市場予測を上回ると買い、下回ると売り
鉱工業生産指数の発表の結果が市場予測を上回れば、その国の経済状況が良いと判断できます。通貨も買われる可能性が高くなります。反対に市場予測を下回れば、その国の経済状況が芳しくないと判断されるため、通貨が売られやすくなります。
国によっては鉱工業の輸出が経済の大部分を占めているケースもあるため、チャートへの影響もより顕著になります。
例えば、ドイツや中国などは、輸出に大きく依存する経済構造を持っています。このような国において、鉱工業生産指数が上昇すると、輸出の増加が見込まれ、通貨が買われやすくなる可能性があります。
反対に、そのような国の鉱工業生産指数が市場予測を下回ると、一気に通貨が売られる可能性が高くなります。雇用機会が減少し、企業の投資意欲が低下し、そして輸出が減少すると、より通貨は売られやすくなるでしょう。
鉱工業生産指数があがれば小売売上高も上がる可能性がある
鉱工業生産指数が上がるということは、これらの産業が活発に活動していることを意味し、様々な好影響をもたらす可能性があります。小売売上高とは、小売業者による商品やサービスの売り上げの金額を表す経済指標で、FXの相場分析に重要な指標のひとつです。
鉱工業生産指数が上がると、雇用の増加・企業の業績向上・新たな製品の開発販売などが進むと考えられます。消費者の購買意欲が高まるため、小売売上高の数値も高くなる可能性があります。
鉱工業生産指数や小売売上高が上がれば、よりその国の経済が向上している状況だと判断できるため、さらに通貨は買われやすくなると判断できます。ただし、鉱工業生産は増加していても、物価の上昇などの影響で消費者の購買意欲が抑制されると、小売売上高は伸び悩む可能性もあるため、総合的な判断が必要とされます。
鉱工業生産指数の注意点
鉱工業生産指数を利用してFX分析をする際の注意点について解説します。
FX分析における重要度は高くない
鉱工業生産指数は、FOMC、雇用統計などその他の経済指標の発表と比較すると、FXのチャート分析における重要度はそこまで高くありません。
これは、鉱工業生産指数が、他の主要な経済指標と比べて、市場に与える影響力が限定的であるためです。鉱工業生産指数は、経済活動の活発さを示す指標ではありますが、あまり重視しすぎると相場分析を読み誤ってしまう可能性があるため注意が必要です。
鉱工業生産指数を相場分析に活用する際は、必ず他の経済指標や根拠と併用するようにしましょう。例えば、鉱工業生産指数が上昇しているにもかかわらず、雇用統計の結果が低い場合は、経済の状態は決して好調であるとは判断できません。このように、鉱工業生産指数だけに頼らず、さまざまな目線から多角的に分析することが重要です。
重み付けの具体的な方法や根拠は公開されていない
鉱工業生産指数における重み付けとは、各産業の指数の数値に偏りが出ないように、各産業の生産量に割り当てる数値のことです。簡単に言うと、経済全体への影響力が大きい産業ほど、重み付けの数値が大きくなります。
例えば、自動車産業は経済全体に大きな影響を与える産業です。そのため、自動車産業の生産量は、他の産業よりも大きな重み付けが与えられます。
しかし、この重み付けに関する具体的な方法や根拠に関しては公開されていません。そのため、鉱工業におけるどの業種に対してウェイトが重くなっているのかがわからないため、あくまで総合的な判断材料でしかないという点に注意が必要です。
特に、鉱工業と深いつながりのあるCFD商品などの相場分析に活用する際は注意しましょう。
鉱工業生産指数の発表時は注意してトレードしよう!
鉱工業生産指数は、経済指標のなかでもチャートに与える重要度はあまり高くはありませんが、他の経済指標の結果などと併用することで、十分に活用できるでしょう。
鉱工業生産指数も、その発表時にはチャートが大きく急騰・急落する可能性があります。決して油断せずに、発表の前後はポジション保有をしないなどの対策をしておきましょう。