海外FX初心者
米国雇用統計とは?
米国雇用統計は、アメリカにおける雇用情勢を調査した包括的な統計データです。雇用者数、失業率、賃金、労働時間など、多角的な視点から膨大な項目のデータが発表されます。
雇用情勢の変化は個人所得や個人消費に直接影響するため、景気動向を測る上で重要な指標です。雇用統計の結果が政府の政策決定や企業戦略にも影響を与えることも多くあります。
また、為替市場や株式市場の重要な材料であり、FXトレードにおいては特に注目すべき経済指標の一つとして認識されています。
発表のタイミングと調査対象
米国雇用統計は通常、毎月第一金曜日のアメリカ東部標準時(EST)の午前8時30分に発表されます。日本時間だと、午後10時30分(夏時間・午後9時30分)です。「前月の12日を基準日として、12日を含めた1週間分の雇用状況」の統計が発表されます。
米国雇用統計は、約16万の企業・政府機関と40万件のサンプルを対象とした調査に基づいています。季節変動が大きく一時雇用の多い農業従事者や自営業を対象外とし、他の産業の安定した雇用状況をより正確に反映させています。
米国雇用統計を発表する機関
米国雇用統計は、アメリカ労働省の労働統計局(BLS)が発表しています。単純な雇用者数や失業率だけでなく、働きたいのに働けない人とそうでない人を分けて統計するなど、より実際の景気の指標として有効になるように調査しているのが特徴です。
なお、統計の結果は政府機関が収集する信頼性の高いデータですが、サンプル調査に基づくため、完全な精度は保証されていません。サンプリングによる偏りの可能性も考慮する必要があります。
ADP雇用統計は別物
米国雇用統計と並んで注目されるのがADP雇用統計です。ただし、ADP雇用統計は民間企業ADPが発表する独自の雇用データのため米国雇用統計とは別の方法で収集されます。
米国雇用統計が注目される理由
雇用統計は米国の経済動向を予測する上で非常に重要な指標です。さらに以下のような理由で注目されています。
米国雇用統計が注目される理由
- 米国の政策金利への影響
- グローバル経済への影響
金利政策に与える影響
米国雇用統計の結果は、金利を含む金融政策の方向性を左右するため注目されています。FOMC(連邦公開市場委員会)は目標「雇用の最大化」、「物価の安定」を目標としており、雇用統計の結果を踏まえて金利決定を行うためです。
FOMCとは、米国の金融政策を決定する会合のことです。
結果が良ければ景気がよくなり資金需要が増えると考えられるため長期金利が上昇する傾向にあります。また、物価上昇を抑制するためでもあります。
グローバル経済への影響
アメリカ経済が国際金融市場に与える影響の大きさゆえ、米国雇用統計の影響は他国の経済にも波及するため、グローバルな観点からも重要視されています。
複数の月の雇用統計を受けて米国の経済の好調さを反映している場合、FX通貨ペアや株式の中長期的なトレンドを意識した取引材料ともなります。消費が増えて企業の売り上げが伸びて業績が向上し、株価が長期的に上がる可能性が高いと考えられるためです。
特に影響を受けやすいとされる通貨ペアは以下の通りです。
雇用統計の結果に影響を受けやすい通貨ペア
米国雇用統計で注目すべき項目
米国雇用統計はアメリカの雇用状況を多角的に数値化し、製造業から政府部門まで幅広い範囲をカバーしています。しかし、FX取引においてはすべての項目が同じ影響力を持つわけではありません。
米国雇用統計でFXトレードをする場合に特に注目すべきなのは、「非農業部門雇用者数」、「失業率」、「平均時給(賃金上昇率)」です。各項目の詳細と注目すべき理由を解説します。
非農業部門雇用者数
最も重要な指標の一つは「非農業部門雇用者数」です。非農業部門雇用者数はその名の通り、農業以外の全産業における雇用の増減を意味します。農業部門が除外されているのは、季節によって一時的な雇用が多く、全体の雇用動向を正確に反映しにくいためです。
非農業部門雇用者数の増加は、個人消費の拡大につながる可能性が高く、経済の好調さを示唆します。一方で、非農業部門雇用者数の減少は、経済の低迷やデフレ圧力を示唆します。
失業率
「失業率」も重要な指標です。失業率は、アメリカで失業した人数を労働人口で割って算出した指標です。これには働く意欲がない人などの人数は含まれないため、「働きたいのに仕事がない」人の数を示しています。
失業率の上昇は個人消費の減少につながり、景気が悪化している兆候と考えられます。一方で、失業率の低下は経済が好転している状況と考えられます。
平均時給(賃金上昇率)
「平均時給(賃金上昇率)」も重要な指標の一つです。主要産業における労働者の平均的な時間当たり賃金を示しています。平均時給の上昇による所得増加は消費の拡大につながる可能性が高いため、平均時給はアメリカ経済の好調さを示す重要な指標として注目されています。
他の経済指標との相関関係
米国雇用統計の結果は、他の経済指標とも密接な相関関係にあります。複数の指標を総合的に分析することで、より正確な経済状況の把握や将来のトレンド予測が可能です。ただし、各指標の関係性は常に一定ではなく、様々な要因によって変動することにご注意ください。
米国雇用統計と相関のある指標
米国雇用統計がチャートに与える影響
米国雇用統計の発表が為替市場に与える具体的な影響を、実際のチャートの例からご紹介します。「予想を上回る結果と市場の反応」、「予想に近い結果だった時の市場の反応」に分けて詳しく見ていきます。
予想を上回る結果と市場の反応
米国雇用統計の結果が予想を上回った場合の市場の反応を、「2023年4月の雇用統計」、「2023年12月の雇用統計」の2つの事例で解説します。
2023年4月の雇用統計(5月5日発表)
2023年4月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が33.9万人増加し、市場予想の19万人増を大幅に上回る結果となりました。また、失業率は3.7%と市場予想の3.5%を上回り、平均時給も賃金上昇率は依然として高水準との結果が発表されました。その時のドル円のチャート推移は以下の通りです。
統計発表直後にドル円は急上昇し、その後数日間にわたってドル高・円安傾向が続きました。予想を大きく上回る雇用者数の増加は、経済の好調とFRBによるさらなる利上げの可能性を織り込ませ、相場を大きく動かす結果となりました。
2023年12月の雇用統計(1月5日発表)
2023年12月の雇用統計は、前月から21万6,000人増と、市場予想の17万人増を大きく上回る結果となりました。失業率は前月と変わらず3.7%で市場予想の3.8%より低い結果となりました。発表直後のドル円のチャートの動きは以下の通りです。
チャートを見ると、発表直後に一時的な上昇が見られましたが、その後下落に転じ、発表前の安値を割り込むと更に下落が加速しました。この動きは、良好な雇用統計結果が必ずしもドル高につながるわけではないことを示す例と言えます。
米国雇用統計の単純な結果だけでなく市場のセンチメントやその他の経済指標、リスクなどを考慮する必要があるでしょう。
予想に近い結果だった時の市場の反応
事前の市場予想と結果の乖離が小さかった時の市場の反応を、「2024年6月の雇用統計」、「2023年8月の雇用統計」の2つの事例で解説します。
2024年6月の雇用統計(7月5日発表)
2024年6月の雇用統計は非農業部門雇用者数が20.6万人増でした(市場予想の19.0万人増)。一方で、失業率は4.1%と市場予想4.0%よりも上がりました。予想に近い結果を受け、ドル円チャートは以下の動きをしています。
発表直後に大幅な値動きがあり、上下に長いヒゲをつけています。その後一時的に上昇しましたが、しばらくすると下落し最終的に発表前の水準に戻っています。予想に近い結果を受けて方向感が明確にならず、売り買いの勢力が拮抗する結果となりました。
2023年8月の雇用統計(9月1日発表)
2023年8月の雇用統計の雇用統計では、非農業部門雇用者数は18.7万人増と予想の17万人増よりも良い結果で、失業率は3.8%と予想3.5%よりも優れていましたが、平均時給は前年同月比4.3%増(予想: 4.4%増)と予想を下回りました。発表時のドル円チャートは以下の動きをしています。
予想よりは良かったものの大きなサプライズでは無かったにも関わらず、約145円から146円超まで短時間で急激に上昇し、その後もドル高が続きました。
この反応の背景には、市場の実際の期待値が公表された予想値とは異なっていた可能性や他の経済指標や市場要因の影響を受けたことが考えられます。また、市場参加者が結果を予想以上にポジティブに解釈した可能性もあるでしょう。
このような市場の複雑な動きを理解し適切に対応する能力は、FXトレードで成功を収めるための不可欠な要素と言えます。
米国雇用統計の発表前後ではどんな取引が行われる?
米国雇用統計の発表前後では取引傾向が大きく変化し、特徴的なパターンが見られます。ここからは統計発表前後によくみられる取引行動や戦略について詳しく解説していきます。
統計発表直前のポジション調整
米国雇用統計発表直前には、取引量は通常時と比べて著しく減少します。多くのトレーダーがリスク管理を重視したポジション調整を行うためです。
具体的には、既存ポジションの一部や全部をクローズしたり、ストップロスやテイクプロフィットの水準を調整したりする動きが多く見られます。これらは予期せぬ統計結果による急激な価格変動からポジションを守るためのアクションです。
米国雇用統計発表後の高ボラティリティを狙った短期トレード
米国雇用統計発表直後は、新しい情報を受けて取引が活発化し、ボラティリティを活かして短期的な利益を得ようとするトレードが増えます。主な雇用統計発表時のトレード戦略は以下の通りです。
米国雇用統計発表時のトレード戦略
- スキャルピング:小さな価格変動を利用して短時間で頻繁に取引を行う戦略
- ニューストレード:指標発表の結果や重要なニュースに基づいて取引する戦略
- ブレイクアウト戦略:重要な価格レベル(サポート・レジスタンス)を突破したときにポジションを取る戦略
これらの戦略はいずれもハイリスクハイリターンの性質を持ちます。豊富な経験や専門的な知識、十分な資金管理などが必要になるでしょう。また、これらの自動売買ソフト(EA)を活用して取引するというトレーダーも多いです。
米国雇用統計時に取引しやすい海外FX業者ランキング
米国雇用統計発表時のFX取引では、適切なブローカー選択が重要です。まず、統計発表直後の激しい価格変動時には、トレーダーの戦略を確実に実行するために、正確な約定力が必要です。さらにスプレッドが狭く、拡大しないブローカーが理想といえます。
ここからは、米国雇用統計の発表時に取引しやすい海外FX業者をランキング形式でご紹介します。
第1位:Titan FX(タイタン FX)
Titan FX(タイタン FX)では独自の技術及び高速なサーバーを導入することにより、業界でも最高クラスの約定環境を提供しています。
成行注文の1秒以内の約定率は100%、約定速度も平均37ミリ秒以下と非常に低く、雇用統計時にも優れた約定力が期待できます。Titan FXは同時に業界最狭クラスの低スプレッドも兼ね備えており、米国雇用統計時にも低コストで取引可能です。
また、Titan FXではニュース時の取引制限がなく、レバレッジも最大500倍まで利用可能なため、雇用統計発表時の大きな値動きを十分に活用することができます。
第2位:XMTrading(エックス エム)
XMTrading(エックス エム)では他社に先駆けて2010年からリクオートなしのサービスを提供しています。全取引の99.35%が1秒以下で約定するなど高速の約定も魅力です。
リクオートとは、トレーダーが注文を出した際の価格での取引を拒否され、新しい価格を提示されることです。
また、複数のリクイディティプロバイダーと提携しており、雇用統計発表時を含めた値動きが激しい相場環境でも市場価格で取引を執行することができます。
XMは未入金、入金ボーナスやロイヤルティプログラムなど、魅力的なサービスが充実していることに加えて、初回入金額が500円と初心者向けの設定になっています。このため、リスクをおさえながらXMの優れた環境を利用できます。
第3位:ThreeTrader(スリートレーダー)
ThreeTrader(スリートレーダー)はスプレッドが極めて狭いことで知られており、経済指標発表時も他社よりスプレッドの拡大を抑えられます。
さらに、2024年8月にはレバレッジの引き上げとMT5の導入を行い、これまでスプレッド以外にデメリットがあった部分を大幅に改善しました。積極的なアップデートを重ねて、今では一流のブローカーと変わらない環境を提供しています。
米国雇用統計の特徴を把握してFX取引に活かそう
FXトレーダーにとって、主要な通貨ペアの値動きに大きな影響を与える米国雇用統計は非常に重要な指標です。雇用統計発表時には、ドル円では1~2円ほど変動することが一般的です。
また、米国雇用統計の影響は短期的な変動にとどまらず、中長期的なトレンドも左右します。雇用統計の意味と市場への影響を深く理解し、適切なブローカーを選択してトレードに活用することで、取引パフォーマンスを向上させることができるでしょう。