世界経済に大きな影響を与える「要人発言」とは?
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FX相場は実体経済を反映している「経済指標」だけではなく、主要国の要人が話した発言だけで動くことがあります。そのことは「要人発言」と呼ばれています。
発言がFX相場に影響を与える要人は数多く存在
「要人」と聞くと、アメリカの大統領や日本の総理大臣だけを思い浮かべるかもしれません。しかし、FXの相場にその発言が影響を与える要人というのは、金融に関係する閣僚を含めてもっと幅広く存在しています。
以下は、その発言内容がFX相場に影響を与える要人の一覧です。
- アメリカ
大統領、FRB(米連邦準備制度理事会=中央銀行総裁に相当する役職)議長、FRB理事、連銀総裁、財務長官など - 日本
総理大臣、日銀総裁、副総裁、財務大臣、財務長官、財務官など - 欧州連合(EU)
ECB(欧州中央銀行)総裁、理事、ユーロ圏財務相会合議長、EU加盟国首相など - イギリス
BOE(英中央銀行)総裁など - オーストラリア
RBA(オーストラリア準備銀行)総裁、財務相など - ニュージーランド
RBNZ(ニュージーランド準備銀行)総裁など - 有名投資家
ウォーレン・バフェット、ジム・ロジャース、ジョージ・ソロスなど
例外として、通貨危機や国家破産、戦争を行っている国の首脳発言もFX相場に影響を与えることがあります。2008年に発生したアイスランドの通貨危機では、普段は重要視されないアイスランド政府の発言に世界中のトレーダーが注目しました。
首脳だけでなく金融・財政に関わる人の発言は注目される
なぜ要人の発言が注目されるのかというと、金融に関係する重要なポストに就いている要人の発言から「これから政府はどうするつもりなのか」、「どういう考え方をしているのか」といった情報を引き出して、トレーダーが今後の投資を有利に進めたいという心理からです。
例えば、各国では定期的に政策金利の発表がなされますが、たいていサプライズ発表はされず予想されたとおりの結果となります。しかし今後を予想するために、同時に発表される中央銀行総裁の発言が注目されるわけです。
FX相場に影響を与える発言は各国の中央銀行総裁がもっとも多いのですが、上記一覧に載っているような一国の首脳や金融。財政関係の閣僚などの発言も大きく注目されます。
現役の要人でなくとも、直近で金融関係の要人だった人物の発言が注目されることがあります。その代表が、アメリカの経済学者、ベン・バーナンキです。2006年2月にFRB議長に就任して2014年1月まで在籍していましたが、退任後の発言でもFX相場に影響を与えたことがありました。
そのほか、政府の要人でなくとも、世界三大投資家と呼ばれているウォーレン・バフェット、ジム・ロジャース、ジョージ・ソロスといった人物が起こした行動により市場が動くこともあります。例えば、ウォーレン・バフェットが「今はアメリカ株を買っている」という発言をしたときには、世界中の株価が値上がりしたということもあります。
1987年2月のルーブル合意により、主要7ヵ国の通貨当局者は為替相場には言及しないとの申し合わせをしていますが、時が経つとともに忘れ去られるようになり、この合意は効力が薄れつつあるようです。
また、本人が直接発言するという形をとらずに新聞記者など第三者にリークするといった形で、市場の反応を見るという手をとる場合もあります。
何気ないひと言でFX相場が大きく動くこともある
次に要人発言の具体例を見てみましょう。
最近の要人発言でインパクトが大きかったのは、2016年3月10日の「ECB理事会」の決定内容公表後に行われた「ドラギ総裁」の会見でした。
このとき、資産買い入れ規模を月間600億ユーロから800億ユーロに拡大させることにしたことで、市場は好感してユーロドルは大きく下げ「1.08ドル」に近づく勢いで下落していました。しかし定例会見でドラギ総裁は「今後一段の金利引き下げが必要になるとは思わない」と発言してしまったのです。
直後、売られていたユーロが急反発し、ユーロドルは「1.11ドル」の水準を突破し「1.12ドル」まで戻してしまいました。1.08127ドルから1.12176ドルまでの戻しですから、ざっと400pipSほど跳ね上がる形となったわけです。
日本の「安倍総理」の発言もFX相場を大きく動かしたことがあります。2016年4月5日の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューに答える形で、「外国為替市場での恣意的な介入は控えるべきだ」と発言しました。
同時に、国が輸出競争力をつけるための為替介入についても、「いかなる環境にあろうと避けないといけない」と語ったことが掲載されたことから、同日のニューヨーク外国為替市場の円相場は1ドル=109円台の円高水準へと上昇してしまいました。もともとFX相場が円高に大きく振れ始めた、ちょうどその絶好のタイミングに重なってしまったわけです。
うまく相場を動かした要人発言も存在
このように要人発言によって、FX相場が思惑とは反対の方向に動いてしまう=失敗してしまうことは多くあります。その逆に成功する例もあります。
2015年、アメリカ・アトランタ連銀のロックハート総裁が米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、「9月の利上げを先延ばしするためには米経済が大幅に悪化する必要がある」と回答。利上げを支持する発言をしたことでアメリカの長期金利は上昇し、「米ドル/円」相場は短時間で70PIPSのドル高を記録したことがあります。
また、日本の「麻生財務大臣」も発言により相場をうまく動かせる人物です。急激な勢いで円高が進む状況を見かねて、麻生財務大臣は2016年4月8日、「場合によって必要な措置をとる」という発言をしました。そうすると、この発言をきっかけに円高がピタっと止まり、以降しばらくは日銀追加緩和への期待もあって、円安に流れていきます。
しかし日銀追加緩和の当てが外れ、ゴールデンウィーク中に円高が進んで一時は「米ドル/円」が105円台となります。そこで麻生財務大臣は5月9日に「必要なら為替介入する用意がある」という発言をしたのです。するとまた、この発言を受けて一日のうちに大きく円安が進み、5月10日には「米ドル/円」は109円をつけていました。この円安を受けて市場に安心感が広がり、株価も軒並み上昇することとなったわけです。
市場に介入せずに相場を動かす「口先介入」も大事
資本を投下せずに、相場を正常な方向に巻き戻す内容の発言をすることを「口先介入」と呼んでいます。この「口先介入」は市場に介入するわけではありませんので、いったんはFX相場が動いてもしばらくすると元通りになってしまうこともあります。
しかし「口先介入」が市場の流れと上手くはまった場合には、発言したとおりの思惑どおりに市場のトレンドが変わることもあります。そういった意味では、日本の麻生財務大臣の発言は上手だといえます。
記者会見やインタビューの内容によりFX相場は動く
要人発言は数多く行われていますが、すべての発言がFX相場を動かすわけではありません。しかし以下のような内容に言及した際にFX相場が動くことが多いといえます。
- 今後の自国の景気が拡大していくと解釈できる発言
- 利上げするのではないか(あるいは、利上げや景気縮小しているのではないか)と解釈ができる発言
一国の金融・財政政策を担当する、要人の発言のタイミングは、経済指標の発表前後に行われる記者会見や、有力紙(誌)の単独インタビューなどで行われることがほとんどです。インタビュー内容を事前に把握することは不可能ですが、記者会見のスケジュールは予め公表されています。
FXブローカーなどが発表している記者会見などのタイムスケジュールは、事前に必ず確認しておきましょう。